
2023年、インドが中国の人口を超え、世界一人口の多い国になった。国連の2024年食品廃棄指数報告書によると、インドは2022年に7億8000万トンもの食品を廃棄しているという。これはインド国内で生産される全食品の22%に相当する。
この大量の食品廃棄物を救済できれば、インド人口の4分の1以上にあたる3億7700万人を養えるという。さらに2022年にはインドの人口における約16%の人が栄養不足だった背景から、食品を無駄にせず国民に供給するための工夫が必須といえるだろう。
そうしたなか、インド最大のフードデリバリーアプリ「Zomato(ゾマト)」は食品ロスの削減を目指して意欲的に取り組んでいる。
フードデリバリー業界の抱える問題のひとつが、注文のキャンセルだ。Zomatoでは、返金不可ポリシーといった厳格な安全策を敷いているにもかかわらず、毎月40万件以上の注文がアプリ上でキャンセルされているという。その結果、行き場をなくした食品は廃棄せざるを得ない。
そこで同社は2024年11月より、キャンセルされた注文を顧客が割引価格で購入できるようにする「フードレスキュー」の仕組みを新たに開始した。
フードレスキュー機能では、顧客が注文をキャンセルした場合、配達しているパートナーの半径3km以内にいるZomatoユーザーのアプリに割引価格とともにポップアップ表示される。キャンセルされた注文を受け取るオプションに関しては、元の顧客とそのすぐ側にいるユーザーは利用できない仕組みだ。代わりに、新しい顧客が支払った金額は元の顧客とレストランに分配され、ドライバーにも集荷から配達完了までの全行程に対して報酬が支払われる。なお、Zomatoは必要な政府税を除いて収益を一切保持しないという。
食品の鮮度と品質を守るためのルールも設定されている。例えば、キャンセルされた注文を購入するオプション機能は数分間のみ利用可能。また、アイスクリームやシェイク、スムージーなど配達距離や温度に影響されやすい生鮮食品は、フードレスキュー機能の対象外だ。
ZomatoのCEOであるDeepinder Goyal氏によると、「キャンセルを月2回までに制限する」「現金支払いの注文は適用しない」など、インターネットユーザーに指摘された潜在的なルールの抜け穴も、すでに対策済みだという。
We don’t encourage order cancellation at Zomato, because it leads to a tremendous amount of food wastage.
Inspite of stringent policies, and and a no-refund policy for cancellations, more than 4 lakh perfectly good orders get canceled on Zomato, for various reasons by customers.… pic.twitter.com/fGFQQNgzGJ
— Deepinder Goyal (@deepigoyal) November 10, 2024
ただし、Zomatoの食品ロス対策をめぐっては、レストラン間で意見が分かれているようだ。
そもそもフード・レスキュー機能は9月に義務的な方針として初めて導入されたが、複数のレストランからの反対に遭い、撤回。2024年11月に任意の制度として再導入された、という経緯がある。これに伴い、当初はキャンセルされた注文に対してレストランに課せられていた「再掲載可能手数料」が廃止となった。レストラン側は元の注文に対する補償に加えて、新しい顧客の支払額も一部受け取れるようになっている。
しかし、一部のレストランは納得しておらず、ブランドイメージやロイヤリティが損なわれる可能性を懸念し、食品の品質が維持される保証はないと主張している。
とはいえ、インドのフードデリバリー市場の58%を占める企業による食品廃棄物削減の取り組みは、軽視されるべきものではない。この現実は、多くのインド国内のレストラン経営者も認識しているところだ。
機能の良し悪し以上に、レストランやユーザーの声を取り入れつつ、試行錯誤しながらも新たな取り組みにチャレンジしているZomatoの姿勢に共感する人も多いのではないだろうか。
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【参照サイト】食品廃棄物指数レポート 2024 English