近年、日本の農業では、高齢化や人手不足の影響により荒廃農地の増加が問題視されている。特に農地面積の約40%を占める中山間地域ではその傾向が顕著で、持続的な営農の実現が課題となっている。
さらには、消費者のカーボンニュートラル実現に対する意識の高まりとともに、農業における再生可能エネルギーの導入にも多くの期待が寄せられている。2021年5月には農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定し、2050年までに目指す姿と取組方向のひとつとして「農林漁業の健全な発展に資する形で、我が国の再生可能エネルギーの導入拡大に歩調を合わせた、農山漁村における再生可能エネルギーの導入を目指す。」ことを挙げるなど、政府としても農業の生産力向上と持続性の両立を重要視していることがわかる。
一方で、初期投資の負担や生育環境への影響に対する不安も根強い。こうした背景から、再生可能エネルギー設備の実装には依然として高いハードルが存在しているといえるだろう。

そうしたなか、農業に持続可能な収益と価値をもたらすことを目指して、「ヤンマーホールディングス株式会社」が2025年6月11日、「SAVE THE FARMS by YANMAR」プロジェクトの立ち上げを発表した。
本プロジェクトは、農業が抱えるさまざまな課題に対し、ヤンマーが有する技術とノウハウを最大限に活用したソリューションを提供することで、耕作放棄地の拡大を抑制し、未来の農地を守ることを目指す独自の取り組みだ。
第一弾としては、環境再生型農業と営農型太陽光発電を組み合わせたソリューションを用いて、滋賀県栗東市および岡山県岡山市の農地において事業を開始する。
環境再生型農業×営農型太陽光発電によるソリューション

ヤンマーグループの「ヤンマーアグリ株式会社」と「ヤンマーアグリジャパン株式会社」は、「千葉大学」および「千葉エコ・エネルギー株式会社」が推進するSOLVE for SDGs「脱炭素スマート農地研究」において、太陽光発電システム下でのスマート農業技術、営農方法、農作物の評価手法などに関する共同研究を行ってきた。
また、環境省の「脱炭素先行地域」に選定された滋賀県米原市では、同市とともに「ECO VILLAGE構想」を策定。耕作放棄地への営農型太陽光発電の導入や、地域内におけるエネルギー循環の強化に取り組み、先行事例として一定の成果を上げている。
今回、こうした先行事例を応用し、新たなソリューション事業として立ち上げた。
ソリューションを活かした自社営農型モデルの構築

環境再生型農業×営農型太陽光発電によるソリューションの仕組み
また、担い手不足という課題解決のひとつとして、地域農家が営農し、営農支援金をヤンマーが支払う農家営農型モデルに加え、ヤンマーグループが農地所有者から土地を借用し、環境再生型農業技術を活用しながら、営農から作物の販売までを自社で行う「ヤンマー自社営農型モデル」を構築。
長期的な農地の賃借などによる農地所有者の収入増につながり、将来的には農業を志す新規就農者の支援も行っていく予定だ。
さらには、水稲の中干し延長によるメタンガス排出抑制やバイオスティミュラント、もみ殻バイオ炭の施用による土壌改良・炭素固定などの脱炭素に貢献する農法をはじめとした、データに基づく環境再生型農業の手法確立を目指す。
その他にも、2026年4月頃に開始を予定している発電事業をはじめ、「ヤンマーエネルギーシステム株式会社」によるバイオ炭施用による土壌改良とカーボンクレジットの創出や、特例子会社である「ヤンマーシンビオシス株式会社」との連携による障がいのある人の活躍機会拡大や、メンタルヘルスの回復などの農福連携に取り組むという。

【左】栗東市の農場(2025年5月1日撮影)、岡山市の農場(2025年6月6日撮影)
滋賀県栗東市ではグループ特例子会社による障がい者雇用、岡山市では地域農家による営農を実施。農地上空部に設置する発電設備でグリーン電力を生み出し、蓄電池や電動農機などを活用する。将来的には非常時に地域住民へ再生エネルギーを給電するなど、エネルギーの地産地消と地域レジリエンスの強化にも寄与する計画だ。
今後は、栗東市や岡山市の他にも順次地域の課題に寄り添って全国の自治体・農業関係者へ提案を行なっていくという。2030年度には全国で1,000haでの展開を目指し、将来的にはグローバル展開も視野に取り組んでいく予定だ。
農業と再生可能エネルギーを融合させた「SAVE THE FARMS by YANMAR」プロジェクトは、次世代の食とエネルギーのあり方を支える新たなモデルとなり得るものだ。
農業に深く関わる大手企業であるヤンマーホールディングス株式会社が、自社の技術とノウハウを活かし、各地域が抱える農業の課題に真正面から向き合い、解決へと導こうとする姿勢は非常に心強い。これまでに培ってきたソリューションを地域に展開し、持続可能な農業の実現に貢献する本プロジェクトは、今後の農業とエネルギーの連携を推進する先駆的な取り組みといえるだろう。
【参照サイト】食料生産とエネルギー変換の技術で未来の農地を守る「SAVE THE FARMS by YANMAR」の取り組みを開始
【参照サイト】農林水産省:中山間地域等について
【参照サイト】農林水産省:荒廃農地の発生防止・解消等
【参照サイト】農林水産省:みどりの食料システム戦略(概要)
【参照サイト】脱炭素スマート農地研究 SOLVE for SDGS
【参照サイト】米原市「ECO VILLAGE構想」
【参照サイト】農林水産省:バイオスティミュラントについて




















































