宿泊施設のためのシフト管理システムを開発。タスクの明確化でムリ・ムダ・ムラを解消

新型コロナウイルスの影響で深刻な打撃を受けた観光産業の回復を図るため、2023年1月10日から、全国を対象とした観光需要喚起策「全国旅行支援(全国旅行割)」がスタートした。帝国データバンクの発表によると、旅館・ホテルの4割超が増収の見込みで、市場は3兆円台に回復の見通しだという。一方で、多くの旅館・ホテルが正社員・非正規社員ともに、不足していることが明らかになっている。人材派遣会社の「引き合いは旺盛だが、派遣人材の獲得競争は熾烈」という声からは、その深刻な状況が伺える。

また、厚生労働省の発表によると「宿泊業・飲食サービス業」の離職率は26.9%と、他の業界よりも高い数値であることも分かっており、業界全体で従業員の待遇や労働環境の改善に取り組むことが求められている。

そうした課題を解決するため、旅館ホテル向けのサービスを展開する「株式会社お宿応援隊」は、2023年1月23日、宿泊施設に特化した、 シフト管理システム「宿しごと」の開発を発表した。

「宿しごと」は、クラウド方式を活用した旅館ホテルに特化したシステム。WEB上に、1時間単位での作業タスクを明確にした工数表を作成。就労者は、就業したい時間、セクション、タスクを事前に確認し、希望する工数を予約する。予約は、スタッフの優先順位を付けず入力するが、複数の希望者がある場合は、現場責任者により調整を行う。

就労者のスケジュールが組みやすいよう、3ヶ月ほど先までの工数表を作成。実際に予約の通りに就労したか否かの確認は、既存タイムカードで管理する。パソコンに慣れていない高齢スタッフでもスムーズな運用ができるよう、導入前研修も実施できるという。

工数表のイメージ:グレーの網掛けは、すでに他のスタッフが予約済。例えば、あるスタッフが1月1日19時からフロントのタスク(夕食応援)を予約。空きがあれば就労が可能。

同システムによるタスクの明確化で、作業時間を短縮できるうえ、子育て中やダブルワークなど短時間もしくは不規則な時間帯でしか就労できない従業員にも広く就労の機会を提供できる。また、売上データと工数データをリンクさせることで、課題や改善点を確認でき、その後の人材適正配置につながる。

ホテルなど宿泊業の「SDGs推進」というと、アメニティなどのプラスチック削減食品ロスの削減などを思い浮かべる人が多いかもしれないが、SDGsの8番目には、「働きがいも経済成長も」という目標が掲げられている。この目標は、世界中の労働と雇用に関するあらゆる課題の解決を目指すものだ。今回紹介した新たなシステムの導入など、効率的で無理のない業務体制の改善に取り組むことで、人手不足の解消だけでなく、サステナブルなホテルづくりにもつながると言えそうだ。

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【参照サイト】 宿泊施設に特化した、シフト管理システム「宿しごと」。これからは、働く人が、働く時間を決める。
【参照サイト】 帝国データバンク:特別企画:「旅館・ホテル業界」 動向調査(2022年度業績見通し)
【参照サイト】 厚生労働省:平成 30 年雇用動向調査結果の概況

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