日本では、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品、いわゆる「食品ロス」の量が年間612万トンにも及ぶ(2018年)。そのうち外食産業や食品製造業などから発生する事業系食品ロスは、328万トンだ。
食品ロスは焼却処分の過程でCO2が発生するため、気候変動の要因となる。また、食品の生産過程や輸送においても大量の水やエネルギーを使用するが、食品ロスとして廃棄されればそれらの資源も全て無駄になる。このように、食品ロスが発生することによる環境への悪影響は免れない。
このような食品廃棄の問題に立ち向かうべく、AIテクノロジーを活用した画期的なシステムを開発しているのが、英国に本拠を置くフードテックカンパニーのWinnowだ。同社が昨年初めから提供している食品廃棄物のモニタリングシステム「Winnow Waste Monitor」はすでに世界40か国以上のレストランのキッチンで導入されている。
Winnow Waste Monitor には主に「記録」と「分析」という2つの機能がある。デジタルスケール機能のついたゴミ箱とそれに接続されているタブレット型のモニターがあり、ゴミ箱に食品が廃棄されると重量が自動で計測される。シェフやスタッフはモニターで廃棄した食品名とその理由を入力するという仕組みだ。
モニターには捨てられた食品の価値がリアルタイムで表示されるため、シェフやスタッフの行動変動につながる。食品廃棄の中身と量を可視化することで、管理できるようになる。
Winnowが同システムをさらに発展させて新たに開発した「Winnow Vision」では、ゴミ箱にカメラを設置し、AI(人工知能)によって廃棄された食品を自動で識別し、学習していく機能が実装された。ゴミ箱の中にすでに様々な食品廃棄物が入っている状態でも新たに廃棄されたゴミだけに反応して食品名を割り出すという。
シェフやスタッフは、判定された食品名が誤っていないかを確認し、廃棄した理由を入力し、この作業を繰り返していく。すると、Winnow VisionのAIは次第にその内容を学習し、最終的には逐一データを入力をしなくても、廃棄物を正しく自動識別できるようになっていく。
Winnowによると、同システムの導入により半年から1年以内に従来の食品廃棄量が4~7割程度削減でき、2~8%のコスト削減につながるという。AIを活用することで食品ロスもシェフやスタッフの時間もコストも削減してくれる、非常にありがたいシステムだ。食品廃棄問題の解決に向けた革新的なDXが、世界中のキッチンで静かに始まっている。
【参照サイト】Winnow