ホールフーズマーケット、漁業従事者の人権を守るためのシーフード行動規範を発表

ホールフーズ シーフード

近年、世界で魚介類の消費量が増加しているのに伴い、漁獲量も急増している。一方で、混獲や乱獲によって海洋生態系が破壊されたり、違法漁業が横行したりと弊害も大きい。特に違法漁業は水産資源を枯渇させかねないうえに、児童労働や強制労働といった深刻な人権侵害を引き起こしている。

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今、持続可能な漁業を実現するために、水産資源に関わるサプライチェーン全体で漁業従事者の人権を守ることが重要視されているなかで、アメリカを代表するオーガニックスーパー「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」は、2025年1月28日に新たなシーフード行動規範を発表した。

ホールフーズ・マーケットは、アメリカのオースティンに拠点を置く自然食品およびオーガニック食品の小売業者だ。1980年の設立以来、アメリカやカナダ、イギリスなど国内外で530以上の店舗を展開。同社では取り扱う商品に独自の品質基準を適用し、サステナビリティの向上に努めている。魚介類も例外ではなく、店舗のシーフードはすべて責任ある養殖または持続可能な方法で捕獲された商品だという。

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今回、ホールフーズ・マーケットが公開したシーフード行動規範は、国連のビジネスと人権に関する指導原則や国際労働機関(ILO)の漁業労働条約など、世界的に認められた原則に基づくものだ。この行動規範では、船主から加工業者、販売業者に至るまで全ての水産物サプライヤーが従うべき明確な基準を制定。企業として社会的責任を推進するとともに、サプライチェーンの継続的な改善を図るという長期目標の一環に位置づけている。

同社が新しい行動指針を示すことで、世界中のシーフードサプライチェーン全体で労働者の人権と福祉を保護するという従来の取り組みを強化。漁師と船員をより手厚く保護し、倫理的な労働慣行とサプライチェーンにおける透明性の基準をさらに引き上げたいとしている。

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新しいシーフード行動規範は、寿司を含む生鮮、冷凍、缶詰など水産物の供給業者すべてに渡り、平等に適用される。雇用や健康、安全など、労働者にとって重要な分野でサプライヤーが遵守すべき内容を明示している。
例えば、労働時間と休憩時間については国際労働機関(ILO)の漁業労働条約に合わせ、すべての漁船は11か月ごとに港に寄港しなければならないと定めた。

また、倫理に則った採用を推奨するために採用手数料を禁止。契約書に関連する情報を正確に記載することや、労働者が就労開始前に契約を確認したり研修を受けたりする時間を設けることなど、明確かつ公正な雇用契約を義務付けている。

さらに、漁業の主な就労場所となる船舶の安全衛生についても言及。すべての乗組員が必要に応じた安全トレーニングを受けられるよう求めた。また、業務を安全かつ効果的に遂行するために、個人用保護具(PPE)の提供に加え、十分な食料や安全な飲料水を確保することの重要性を強調している。

同時に、適切な医療体制の整備、清潔なトイレ設備、十分な休息が取れる就寝スペースの確保など、船内環境の改善も必要だと指摘。そして、労働者の権利を尊重する観点から、乗組員が海上でも家族やNGO、労働者の代表者と連絡を取れるよう、通信チャネルへのアクセスを義務付けた。サプライヤーには、船舶へのWi-Fiの優先設置を求めている。

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こうした漁業従事者のニーズと権利に焦点を当てた革新的なシーフード行動規範を通じて、ホールフーズ・マーケットはトレーサビリティの向上と漁船乗組員のコミュニケーション環境の強化にも取り組んでいる。この倫理的で透明性の高いシーフード業界を目指す取り組みは、サプライヤーの意識変革を促すだけでなく、他の小売業者や水産業界の関係者にとって、サステナブルなモデルケースとなり得るだろう。

今後、サプライチェーン全体で持続可能性を高めていくためには、食品の小売業者や飲食店が具体的な行動規範を開示することがひとつのキーポイントとなるかもしれない。

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【参照サイト】Whole Foods Market Launches New Seafood Code of Conduct to Advance Human Rights and Social Responsibility in the Supply Chain

【参照サイト】Whole Foods Market Seafood Code of Conduct
【参照サイト】Maritime – Fisheries | International Labour Organization

table source 編集部
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