魚は私たちの食卓に不可欠なものだが、近年漁業では乱獲が問題視されている。国連食糧農業機関によると、世界の乱獲資源の数は半世紀の間に3倍に増え、現在評価済みの世界の漁業の3分の1が生物学的限界を超えているという。そしてこの乱獲には、別の種を漁獲する際に、不要な海洋生物を一緒に捕獲してしまう「混獲」が密接に関わっている。国連は漁獲される海洋生物の20〜25%が漁業による「混獲」によってすくい上げられると推定しており、主にアザラシ、ペンギン、イルカなどが含まれその大半は死んでしまう。
こうした問題を受け、オーストリアのRevo Foods社では、プラントベース(植物性)のスモークサーモンを開発し、2021年11月に発売している。2022年5月現在、すでに14カ国で展開しており4月にはイギリスでの販売も開始された。エンドウ豆のたんぱく質、植物油、藻の抽出物など11種類の食材を使用し、3Dプリント技術を用いて作られるこのヴィーガン・サーモンは、オメガ3を含むが大豆やナッツなどの主要なアレルゲンは一切使用していない。持続可能な方法で製造されており、同社の調べによると、従来のサーモンよりもCO2の排出量が85%も少ないという。
Revo社は独自の消費者調査で、試食者の85%が同社のサーモン類似品を「好ましい」または「非常に好ましい」と評価したことを明らかにした。海が廃棄物の投棄場所として利用され、その影響が浮き彫りになっている今、消費者にとって魚介類に含まれる毒物や汚染物質は大きな懸念点だ。そうした物質が含まれていないという点でも、このヴィーガン・サーモンは多くの消費者に受け入れられそうだ。寿司や健康食の世界的な人気の高まりに伴い、今年は刺身や寿司用の製品も市場に投入される予定だという。
Revo社のほかにも、スペインではトマトを使った生マグロ「Tunato」、日本では海藻から抽出した成分を使ったいくら「プチル」など、世界中で持続可能な代替シーフードの開発が進んでいる。今後飲食業界のスタンダードになる日も近いかもしれない。
【関連記事】
【参照サイト】 Revo FOODS
【参照サイト】 Revo Foods Has Launched Its Vegan Smoked Salmon In The UK
【参照サイト】 CMS:Convention on the Conservation of Migratory Species of Wild Animals
【参照サイト】 Food and Agriculture Organization (FAO)