ヴィーガンとは動物性食品を一切摂取しない完全菜食主義を指し、さらに動物由来の素材や動物実験された製品を避ける人もいる。つまり衣食住の「食」だけでなく「衣」「住」においてもヴィーガンに対応していることが、ヴィーガンを選択する人にとって消費行動の決め手となるのだ。
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例えば「住」にまつわるインテリアの分野では、世界的な高級自動車メーカーで車の内装にヴィーガン仕様を取り入れる動きが広がっている。スウェーデンの「Volvo Cars」は2021年9月以降、動物福祉の一環として全ての電気自動車(EV)で本革を使用しないと宣言。同社は2030年までにEVのみを販売する目標も掲げており、完全にレザーフリーへと移行する方針だ。また、「BMW」が2021年にMINIブランドでは今後本革を使わないと表明したほか、「Audi(アウディ)」では一部の車種でレザーフリーパッケージのオプションを用意している。

そうしたなか、2025年9月にドイツの大手自動車メーカーである「メルセデス・ベンツ」が、新型電気自動車「GLC」のインテリアオプションとしてヴィーガン協会に認定されたヴィーガンパッケージを提供すると発表した。今後、メルセデス・ベンツで車を購入する際には、世界で初めて第三者機関によるヴィーガン商標の認証と承認を受けた車内インテリアを選べるようになる。
ヴィーガン協会は、1944年にイギリスのバーミンガムで設立された世界初のヴィーガン団体だ。1990年には、消費者がヴィーガン製品を識別しやすくするためにヴィーガン商標を導入。この商標は、動物由来の成分や添加物、副産物、派生物を一切使用せず、またいかなる動物実験も実施せずに製造加工されたことをヴィーガン協会が認めた製品にのみ付与される。今では食品から飲料、化粧品、衣料品、家庭用品に至るまで、68カ国で7万点以上の製品が登録されており、国際的な信頼を得た基準といえるだろう。

GLCのヴィーガンパッケージに採用した素材に関しては、ヴィーガン協会の専門知識をもとに精査している。まず、メルセデス・ベンツ車で現在利用可能な内装素材とその製造プロセスを、ヴィーガン協会によるパイロットプロジェクトでチェック。動物由来の成分が含まれる兆候が見られた場合、各サプライヤーと協力して素材を開発したり代替品に置き換えたりした。実際にシートやヘッドライナー、ピラー、ドアパネル、そして車内やトランクに敷かれたカーペットなどのソフトタッチ内装素材には、高い割合でリサイクル素材を使用しているという。
最終的に、メルセデス・ベンツが様々なサプライヤーから調達した約100種類の原材料はヴィーガン協会の厳密な認証基準に基づき監査され、ヴィーガン商標を取得するに至った。この結果、同社が独自開発した合成皮革であるMB-Texを使用したすべての表面と、車内インテリアに使用しているすべてのテキスタイルに動物由来製品が一切含まれていないことが保証されたわけである。
ヴィーガンというと食材についてイメージしがちだが、アニマルウェルフェアの観点からファッションやインテリアの分野でも動物性の素材を避ける人は少なくない。多様化する消費者ニーズに対応するには、こうしたサステナブルな選択肢を提案することが、商品の付加価値を高め、ブランドのイメージ向上や差別化にもつながるだろう。
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