爆発的に増加する「ウツボ」を活用。崩れゆく海の生態系を表現したパエリアが発売

温暖化の影響を受け、1901から2010年の間で海面が19cm上昇している。今後も更なる海水温の上昇により氷河が溶けるなど、2100年までに最大で82cmも上昇することが予測されている。

海水温の上昇は、海の生態系にも多大な影響を及ぼしており、三重県東部の伊勢志摩では、近年「ウツボ」が爆発的に増加し、問題になっている。伊勢志摩地方はリアス式海岸の複雑で入り組んだ地形がもたらす豊かな生態系が育まれてきた。近海に生息する「ウツボ・真蛸・伊勢海老」は、伊勢海老を捕食する真蛸、真蛸を捕食するウツボ、ウツボに隠れる伊勢海老という共生の三角関係としてバランスを保っていた。

ところが、様々な地球環境変化により真蛸が減少する一方で、ウツボの個体数は増加。餌となる真蛸が足りなくなったウツボは、今まで共生関係にあった伊勢海老を捕食し始めた。三重県の三重外湾漁業協同組合や漁師などの水産関係者によると、2022年夏にはついに伊勢海老の水揚げ量がおよそ1/10、真蛸の著しい減少から真蛸漁はほぼゼロになってしまったという。

こうした海の生態系の崩壊などの環境問題に“食”を通して、フォーカスするプロジェクト「FARMER⇄YOU(ファーマーユー)」が、アーティストユニット「In-yo(陰陽)」と協業企画する「EAT to KNOW(イート トゥ ノウ)」をスタート。美味しく食べることにより環境問題を知り、次の世代に“食”のバトンを渡すことを目的としている。

このEAT to KNOWの第一弾企画として、伊勢志摩地方で冷凍業と漁業を営む石川隆将氏とウツボの資産化に取り組む。ウツボを当たり前に食べる食材として認知させ、その需要の拡大と市場価値の構築を目標に、海のバランスを取り戻す為のきっかけや沿岸部の環境課題に対する関係人口を増やすことを目指すという。

この取り組みの皮切りとして、2023年3月27日より、バルセロナ発のパエリア専門店「XIRINGUITO Escribà(チリンギートエスクリバ)」のシグネチャーパエリアと伊勢志摩の生態系にフィーチャーしたコラボレーションパエリア「伊勢志摩の海のパエリア」の販売を開始した。

三重県とスペインは、地理的特徴や産業構造が似ていることから姉妹都市提携を組んでいる。当初はこのパエリアを「ウツボ・真蛸・伊勢海老」の3種で構成予定だったが、あえて真蛸を外すことで、海の生態系が壊れている状態を伝えている。また、視覚的にもこの問題を表現するべく、キービジュアルは「In-yo(陰陽)」フォトグラファー・石川寛氏が撮影。ウツボがパエリアパンをぐるりと囲み、ウツボに全て取り込まれている現状をセンセーショナルに表現した。

XIRINGUITO Escribà(チリンギートエスクリバ)
場所:東京都渋谷区渋谷3-21-3渋谷ストリーム3階
営業時間:11:00-23:00
席数:86席
 
<伊勢志摩の海のパエリア>
Mサイズ(2名):7,300円(税込)
Lサイズ(4名):14,600円(税込)
通常のランチ/ディナーコースにプラス1,800円で変更可能

 

今回のメニュー開発では、三重県伊勢志摩の海洋環境問題を「美味しく問題提議」することをテーマに取り組んでいる。近年は、海産物をめぐるさまざまな問題が起きており、欲しい時にいつでも必要なだけ調達することは難しくなりつつある。飲食店として美味しい料理を安定的に提供するためには、まずは水産資源を取り巻く現状を知り、持続可能な利活用について各々が考えることが重要なのではないだろうか。

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【参照サイト】 食を通して環境問題にフォーカスする〈FARMER⇄YOU〉とアーティストユニット「In-yo(陰陽)」がタッグを組んだ「EAT to KNOW」プロジェクトが始動。
【参照サイト】 全国地球温暖化防止活動推進センター:温暖化とは?地球温暖化の原因と予測

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