
廃棄物の素材を生かしながらデザインやアイデアによって新たな価値を与え、元の状態より価値を高める「アップサイクル」。大量生産・大量消費の現代の消費活動から、持続可能な循環社会への移行が求められている今だからこそ、特に注目されているキーワードだ。
生活情報誌「オレンジページ」を発行する株式会社オレンジページが実施した2021年の調査では、「アップサイクル製品に興味がある」と答えた人は65.3%と半数以上にものぼる。また、生活に身近な日用品でアップサイクル商品を試してみたいと感じている人が多い傾向も明らかになっている。
そうしたなか、石川県のニッコー株式会社は、オーダーメイドのシステムバスを製造する際に生じる余剰タイルをアップサイクルした食器「uptile dish(アップタイル ディッシュ)」を開発。2022年7月14日より、渋谷区富ヶ谷にある同社のジェネラルストア「LOST AND FOUND TOKYO STORE(ロストアンドファウンド トウキョウストア)」で販売を開始することを発表した。
1908年、洋食器メーカーとして創業したニッコー株式会社。現在は創業期の「陶磁器事業部」に加え、「水創り事業部」、「環境プラント事業部」、「機能性セラミック商品事業部」、オーダーメイドのシステムバスルームを創造する「バンクチュール事業部」を展開している。
今回発売されたuptile dishは、バンクチュール事業部の手がけるオーダーメイドバスルームブランド「BAINCOUTURE(バンクチュール)」を製造する際に生じる余剰タイルや、補修用として一定期間保管していたタイルに加工を施し、食器として再生した、陶磁器事業部の新商品だ。
uptile dishの商品化には、バンクチュール事業部の持つ、限られた資源を無駄なく使用するための専門的な加工技術が活かされており、使い勝手の良いサイズ感やスタイリッシュで洗練された仕上がりには、長年の食器づくりを通して培ってきた陶磁器事業部の「食」へのこだわりやノウハウが反映されている。
さらに、余剰タイルの管理や商品への加工、出荷、販売までをすべて自社で行うことで、廃棄物の削減だけでなく、再資源化に伴うエネルギーの削減も実現している。
ニッコーでは、陶磁器事業を中心に「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の原則に沿った取り組みを進めてきた。uptile dishの開発は、こうした陶磁器事業のサーキュラー化を進めていくなかで他の事業部での取り組みを模索していたところ、「バンクチュール事業部で発生する余剰タイルを、ただ捨てるだけでなく資源として活用できないか」と考えたことがはじまりだという。
同社のバンクチュール事業部は、オーダーメイド事業立ち上げから20年以上が経過し、これまで約10,000 台のバスルームを納入。一般住宅のほか、ホテルのラグジュアリールームやホテルリニューアル案件へも多く納品しているなかで、2021年7月から2022年6月までの1年間で廃棄されたタイルは約100トンだった。廃棄費用には百数十万円がかかっている。
タイルの原料となる石や土は枯渇性資源であり、上質な資源は既に入手が難しくなりつつある。ニッコーでは、今後も限られた資源の利用と廃棄物の発生が最小限に抑えられるようなサーキュラーエコノミーの実現を目指し、事業部の垣根を越えた取り組みを進めていく。
【販売店舗】
LOST AND FOUND TOKYO STORE(ロストアンドファウンド トウキョウストア)
営業時間:11:00〜19:00 ※定休日:火曜日
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-15-12 1階 / TEL:03-5454-8925
【商品ラインナップ】
正方形20cm角(200×200mm)/990円(税込)
正方形15cm角(150×150 mm)/770円(税込)
長角 (100×60mm)/550円(税込)
砕いたり溶かしたりスクラップしたりといった、製品を再び原料に戻す際のエネルギーを必要とする「リサイクル」。製品をそのまま活かすアップサイクルは、よりサステナブルな再利用の手法だ。今回紹介したuptile dishはバスルーム事業と食器事業の両方を展開するニッコーが自社内で商品化を行うことで、再資源化に伴う余計なエネルギーがかからず、環境負荷を抑えることにも成功している。
料理の盛り付けをはじめ、お店のテイストや内装とのマッチングなど、飲食店における食器の影響力は大きい。どのような食器で料理を提供しているか注目しているお客さまも多いのではないだろうか。uptile dishのようなアップサイクル商品を導入することで、食器を通して、お店の姿勢を伝えることができそうだ。
uptile dishについてのお問い合わせはこちら
【参照サイト】 コロナ禍で、ごみへの意識が変わった!? 「アップサイクル」に興味のある人65.3% 日本人の「もったいない精神」に響いている!?
【関連サイト】 ニッコー株式会社公式サイト