まだ食べられる食品が廃棄されるフードロスを減らす動きが盛んになって久しい。農林水産省によると、2020年度の食品ロス量推計値は522万トンで、前年度より48万トン減少していると公表している。
とはいえ食品の中でもパンにおける年間廃棄量は深刻になっており、こうしたパンのフードロスを削減すべく、ベーカリー「Boulanferme」があるプロジェクトを開始した。
神奈川県にある1923年創業のベーカリー「Boulanferme(ブーランフェルメ)」は、余ったパンの耳で全国のブリューワリーと協同で醸造したクラフトビール「upcycle(アップサイクル)」のアソートボックスを、2022年6月1日よりECサイトで発売開始。
流通経済研究所が2019年に行った「日配品メーカーの食品ロスの実態調査」によると、乳製品や豆腐、納豆などの他の食品に比べ、パンの余剰生産発生率が高いことがわかっている。定番である食パンはその発生率が低いとはいえ、パン全体でみるとほかの食品に比べて高めであることは間違いない。
また同じ余剰生産でも、特別販売や直営店への販売に回される豆腐類と違い、パンは約80%は廃棄処分(リサイクル含む)されていることが明らかになっている。
Boulanfermeでは以前から、サンドイッチ製造をする工程で切り落としたパンの耳を飼料や肥料として畜産農家などに無償提供するなどして有効活用し、フードロス対策を行ってきた。ほかにもできることはないかと考えていたところ、クラフトマン(醸造家)の賛同もあり、パンの耳でビールを作るというプロジェクトを始めたという。こうしてパンの耳をアップサイクルしたクラフトビールが誕生した。
「upcycleアソートボックス」
4種類5本セット価格 4,048円(消費税込み、送料別途)
・Bread Ale (2本)330mlボトル【アルコール5%】
・Bread Amber Ale (1本) 330mlボトル【アルコール5%】
ORIENTAL BREWING / KANAZAWA ISHIKAWA
・Bread NZ Pale Ale (1本) 330ml缶【アルコール4%】
NUMBER NINE BREWERY / YOKOHAMA KANAGAWA
・Bread Coffee Stout (1本) 500mlボトル【アルコール5%】
JOKUN BEER LAB / TOKAMACHI NIIGATA
今回の取り組みは、食品ロスの削減以外にも、醸造するにあたり力を借りた各地のブリューワリーや醸造の際に発生するモルトなどの発酵残渣をリサイクル飼料化する事業者を繋げ、サステナブルな食品ネットワークを構築することにも繋がった。
ものの寿命を少しでも長くするための工夫や、フードロス対策が見直される今。ベーカリーの「もったいない精神」から始まった優しい取り組みで生まれた、個性豊かなクラフトビール。こうしたビールをお店で提供することで、サステナブルな循環の一部に参加することができるうえ、お客さまとのコミュニケーションのきっかけにもなるのではないだろうか。
【参考サイト】パンの耳からつくったクラフトビール・発泡酒を6月1日から発売開始
【参考サイト】農林水産省:食品ロス量が推計開始以来、最少になりました
【参考サイト】これまでのワーキングチームによる食品ロス実態調査結果、および事例の紹介