昨今の日本で対応が急がれている、建築物のバリアフリー化。急速に進む高齢化だけでなく、障害者差別解消法の施行や訪日外国人旅行者の増加に伴い、誰もが利用しやすい環境の整備が必要となっている。特にホテルや旅館といった宿泊施設では、バリアフリーへの対応が強く求められるだろう。
そうしたなか、国土交通省より2019年に施行されたバリアフリー法の改正に合わせ、新規・増設するホテルに対し、全客室の1%をユニバーサルデザインにする義務条例が決定した。さらに、東京都では「建築物バリアフリー条例」を制定し、対応強化に努めている。
こうした東京都の動向を受け、「グランドニッコー東京 台場」はSDGsに関する取り組みの一環として、既存のバリアフリールーム2部屋に加え、8部屋の「ユニバーサルルーム」を新設。2023年8月23日より、ユニバーサルルームの予約受付を開始した。
ユニバーサルルームでは、客室のデザインや設備にさまざまな工夫を凝らしている。例えば、客室は車椅子ユーザーがスムーズに移動できるよう、エレベーターホールの近くに設計。客室やバスルームの出入り口も、車椅子でも使いやすいデザインに変更した。また、SIMMONS社製の電動ベッドや電動補助ソファを設置し、高齢者や障害のある人だけでなく、その介護者にも配慮している。さらに、聴覚障害を持つ方向けに、フラッシュ通知付きのTVドアホンを備え付けた。
この他にも、ゆっくりと閉まるドアや、握力の弱い人でも開けやすい引き出しを採用。廊下には弱視の人にも区分がわかりやすいデザインの絨毯を使用するなど、随所にユニバーサルデザインが取り入れられている。
「グランドニッコー東京 台場」のように、今後、ホテルや旅館でバリアフリー化が進むことで、SDGsの10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」の達成に近づくことができるだろう。
また、消費者のサステナブルな旅行に対するニーズにも応えられる。実際に、2022年2月に大手総合旅行サイト「エクスペディア」が実施した「サステナブルな旅行に関する意識調査」によると、全体の約90%の人が「旅行をする際、サステナブルかどうかを意識している」と回答したという。
ホテルや旅館では、施設内のバリアフリー化を促進して利用者全員へのホスピタリティを高めるとともに、“サステナブルな宿泊先”としての付加価値を生み出してはどうだろうか。
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【参照サイト】【グランドニッコー東京 台場】「ユニバーサルルーム」2023年8月23日(水)より予約開始
【参照サイト】 報道発表資料:「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)」の公表~多様なニーズに対応した客室モデルのバリエーションの追加等~ – 国土交通省
【参照サイト】 「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動に配慮した建築設計標準(追補版)」の概要
【参照サイト】【データ】持続可能な旅行に関する意識調査 エクスペディア調べ