「フードデザート(食の砂漠)」という言葉をご存知だろうか。米国農務省によると、新鮮な野菜や健康的な食品などが手に入るスーパーや大型食料品店などに簡単にアクセスできない、主に低所得者層が住む地域のこと。アメリカでフードデザートに住むとされる1,350万人は、近隣のファストフード店やガソリンスタンドなどで食品を購入することが多く、栄養不足や肥満、糖尿病などの慢性疾患にかかるリスクが高いとされる。
アメリカで増加する健康格差を改善しようと、17,000人以上の医師会員から成る非営利団体「Physicians Committee for Responsible Medicine」は、2022年6月30日に100人以上の医師、栄養士、看護師、大学教授、消防士などを集めた会議を実施した。
同団体代表のニール・バーナード医学博士は、「政府の栄養と食品政策は、肥満と健康問題が肉と乳製品に付随して起こることが十分に警告されていない。」と警鐘を鳴らした。また、慢性疾患の予防に対してプラントベース(植物性)食品の利点の強調や、医療従事者が学ぶための奨励が十分でないことを述べた。
リスニングセッションでは、9月に開催される栄養と健康に関するホワイトハウスでの会議に向けて、「プラントベースの栄養の利点を強調する政策目標が不可欠である」との総意が得られた。実施に向けて掲げた4つの政策目標は、以下の通り。
- 学校や公共施設での、プラントベース食品へのアクセス拡大。
- 学校での、植物性ミルクへの障壁の除去。
- アメリカ人のための、プラントベース食品を推進する食事摂取基準の活用。
- 医師のための、より良い栄養教育の確保。
アメリカで深く根付く、肥満と健康問題。2015年9月に国連サミットで採択されたSDGsの3番目の目標「すべての人に健康と福祉を」に該当し、1番目の「貧困をなくそう」と2番目の「飢餓をゼロに」にも関連する、持続可能な未来のために解決すべき大きな課題でもある。同団体の政府への働きかけが、今後、アメリカでプラントベース食品に対する理解の更なる広がりにつながるのかが注目される。
【参照サイト】Physicians Call on White House to Focus National Nutrition Policy on Less Meat, More Plant-Based Food Consumption
【参照サイト】Interactive Web Tool Maps Food Deserts, Provides Key Data
【参照サイト】WFP:肥満と飢餓の「深い関係」