世界各地で深刻化する海底の砂漠化、「磯焼け問題」をご存知だろうか?磯焼けとは、昆布などの海藻が群生する藻場が著しく衰退または消失し、海底の岩礁が露出してしまう現象のこと。「海の砂漠化」とも呼ばれ、一度この磯焼けが起こると、藻場の回復には長い年月がかかることがわかっている。

磯焼けが起こる原因は海水の温度上昇(21%)や海水の汚染などの原因よりも、ウニの食害が原因である割合が26%と高い。水温が温かく流速などの環境が良ければ食べることを休まず、餌が無くなるまでずっと食べ続けるという習性があるウニは、海水の温度上昇の影響もあり増殖し、生態系への影響が懸念されている。さらに、昆布が発芽し成長する春から夏季にかけて摂餌量が最も大きくなるため、結果的に藻場を食い荒らしてしまう。

寒地土木研究所の研究によると、毎年、昆布の発芽期にウニを除去することができれば、藻類はある程度まで成長することが可能となり、藻場が維持される可能性があることがわかっている。しかし、ウニの除去は手間のかかる作業の上、商品価値がなく実入りの少ない痩せたウニも多く含まれるため、漁業者が積極的に除去作業に取り組むことは難しいのが現状だ。

そうしたなか、株式会社ウニノミクスでは、大分県国東市でとれたウニのうち商品価値のないウニを陸上で畜養し「豊後の磯守(ぶんごのいそもり)」と名づけて特産品として商品化。2021年8月から大分県内及び台湾に向けての出荷を開始した。
ウニノミクスの関連会社である株式会社大分うにファームのウニ陸上畜養施設は、商業規模としては世界でも初めての施設だ。

大分県で未利用資源となっていた痩せたムラサキウニを継続的に漁業者から買い取り、適切な餌と生育環境を与えることにより高品質な身の詰まったウニに育てる。餌には持続可能な方法で収穫された食用昆布の端材を主原料に用いており、ホルモン剤、抗生物質、保存料などは一切使用していない。2ヶ月程度の畜養で商品として出荷が可能だという。

左:畜養前のウニ 右:2カ月程度畜養したウニ

磯焼けの原因となるウニを陸上畜養によって商品化することにより、藻場の回復による海の生態系の回復を図るだけでなく、地域経済の活性化、ウニの国内自給率の向上も期待できる。ウニノミクスでは、商業生産拠点の拡大にあたり、国内外の磯焼け地域において水産関係者などの事業者と事業化の検討を進めているという。
高品質なウニが安定的に通年出荷されるようになれば、飲食店も食材を安定調達することができる。お客さまに提供するメニューの完成度を保つことにつながるだろう。「豊後の磯守」が、大分県以外の地域でも調達できるようになることを期待したい。

【参照サイト】 水産庁第3版 磯焼け対策ガイドライン
【参照サイト】 大分の海を守る陸上畜養ウニ「豊後の磯守」、世界初の取り組みとして8月31日に大分県知事に報告
【参照サイト】 寒地土木研究所:磯焼けから見たウニとコンブの関係

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