外食やテイクアウトといった食の選択肢が広がる一方で問題視されているのが、本来食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう「食品ロス」だ。
2021年4月27日の環境省の報告によると、日本で発生する年間約2,531万トンの食品廃棄物のうち、食品ロスは約600万トンと推計されている。これを国民1人当たりに換算すると、お茶碗1杯分に相当する食べものが毎日捨てられている計算になる。食品ロスの削減に向けた動きはすでに世界各国で進んでおり、2015年9月に国連で採択されたSDGsのターゲットの1つにも、「2030 年までに世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させること」が盛り込まれた。
こうした流れを受けて、全国に飲食チェーンを展開する「株式会社梅の花」は、店舗で発生した食品ロスを堆肥化し循環させる“循環型リサイクルシステム”を構築したと、2023年2月14日に発表した。
同社が運営する飲食店「京都セントラルキッチン」と「久留米セントラルキッチン」では、食品ロスの削減や資源の有効活用を目的として、「ヤンマーeスター株式会社」が製造するバイオコンポスター「YC100」を導入。
店舗で発生した食品ロスを「YC100」によって発酵分解し、ミネラル豊富な生成物に変化させたのち堆肥化する。生成された堆肥は「ヤンマーマルシェ株式会社」を通じて、パートナー生産者に提供される。そして、堆肥を使って作られた農作物は、規格外を含む全量を梅の花グループの飲食店各店舗で利用するという。
食品廃棄物由来の堆肥で育った農作物を食材として再利用するサイクルは、飲食業界におけるサーキュラーエコノミーのモデルケースといえる。この仕組みによって、生産者は化学肥料の使用を減らせるうえに、より持続可能な農法への転換が可能になる。また、飲食店はお客さまに「食事をすることで食品ロスの削減に貢献できる」というメリットを提供することにも繋がる。
食品ロスの削減をはじめ、持続可能な社会の実現を推進するためには、今回の事例のように事業の垣根を越えて他社や生産者と協力し、食を取り巻くサプライチェーン全体を循環型のビジネスモデルに転換していくことが需要なのではないだろうか。
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