UAEの農業革命。砂漠で育つ高タンパクな小麦の品種を開発

UAE小麦開発

中東に位置するUAE(アラブ首長国連邦)は、ドバイやアブダビなど7つの首長国から構成される連邦国家だ。国土の大半が砂漠地域であり、水資源が乏しいうえに気候も極端なUAEでは農業生産が難しい。食料自給率も低いため、食糧のほとんどを輸入に頼らざるを得ないのが現状だ。また、人口の約5分の1が貧困ライン以下の生活を送っており、国民の6%が栄養不足に陥っているという。

しかし、砂漠の中に誕生した「奇跡の農場」が、そうした状況を覆しつつある。

UAE小麦開発

ドバイに隣接するシャルジャ首長国では、食料問題の解決に向けたプロジェクトが進んでいる。シャルジャのMleiha小麦農場は、化学肥料や農薬、その他の潜在的な有害物質を含まない高タンパク質小麦を提供することで食糧安全保障を強化するために2022年に設立された。

そして2025年4月、農業専門家らが高タンパクの小麦品種「Saba Sanabel(七つの穂)」を開発したことを発表。天然タンパク質の含有量は19.3%で、これは世界最高記録だという。USDA(アメリカ合衆国農務省)の栄養データに基づく「タンパク質含有量トップ10の穀物」で1位となっている小麦でも100gあたりのタンパク質が5.7gであることを考えれば、驚くべき数字といえるだろう。

高タンパク質である「Saba Sanabel」の特長は、土壌の肥沃度と含有量を改善し、小麦粒の品質を維持する有機農法によって実現した。Mleiha小麦農場では、灌漑用に汚染物質を含まない淡水化した水を使用。その結果、茎や葉から小麦の粒に発育する乾物への移動が促進され、生産性とタンパク質含有量が向上するという。また、小麦は天然肥料のみで栽培されており、UAEが国内で製造された商品に与える「Made in Emirates」ラベルを含め5つの品質・安全認証を取得している。

さらに、「Saba Sanabel」のプロジェクトは気候保護と農業振興への貢献が評価され、UAEにおける持続可能性に関する最優秀イノベーション賞も受賞。サステナブルな実績の一例として、農場の灌漑システムを人工知能で管理することで水の使用量を30%削減した。また、収穫量と品質を最適化するための衛星熱画像や、リアルタイムで予報を取得して作物を変動から守る気象監視システムといった最先端技術も導入している。

本プロジェクトの最新段階では、1400ヘクタールを超える砂漠地帯で先進的な農業技術を活用し、今シーズンで高タンパク小麦の生産量は6000トンを見込んでいる。そして、将来的にはシャルジャの小麦需要全体を満たして自給率を向上させるべく、フル稼働時の年間生産量の目標を15200トンに設定。同時に、高タンパク質小麦の輸出を推進することで、シャルジャを国際的に主要な小麦供給国にしたいという意図も読み取れる。

実際に3回目の収穫期には、シャルジャの統治者であるSheikh Sultan氏が「Saba Sanabel」を使った製品ラインを立ち上げ、パスタやケーキ、伝統的なアラビアパンなどを提供した。こうした動向は、2051年までに世界で最も食糧安全保障が確保された国になるというUAEの目標にも結びついている。

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2023年の調査では、UAEで人気のレストランでは食事客の3分の2がサスティナビリティを重視しているという結果が出ており、UAEで持続可能な食への関心が高まっていることがわかる。

日本でも食料自給率の低さは深刻な課題だ。そこで、国や企業が新しい食材の開発を推進するのはもちろん、レストランや飲食店がこうしたサステナブルな食材を知り、導入を検討することも解決の糸口となるのではないだろうか。

【参照サイト】UAEについて | 日本アラブ首長国連邦協会
【参照サイト】Top 10 Grains Highest in Protein
【参照サイト】Made in the Emirates – Sinaha Platform
【参照サイト】Toluna presented insights on changing consumer behavior at the Future Food Forum 2023
【参照サイト】Emirati Scientists Create Wheat Variety with ‘Record-Breaking’ 19% Protein

table source 編集部
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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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