寿司や健康食の世界的な人気の高まりにより、米国やアジア諸国でのマグロの消費が拡大している。OPRT(責任あるマグロ漁業推進機構)によると、海外での生鮮マグロの消費は、2007年に合計8万トン強だったものが2011年には15万トンに増加しているという。
需要の高まりに比例して漁獲量も増えている。水産庁によると世界のカツオ及び主要マグロ属6魚種の合計総漁獲量は2002年以降400万トン台で推移していたが、2014年に500万トンを超え、2018年には過去最高の531.5万トンに達した。違法漁業や過剰漁獲も横行しており、近年では水産資源の枯渇が深刻化している。
同時に、マグロ漁の主な漁獲方法である延縄漁・まき網漁により、ウミガメ・イルカ・海鳥・マグロの幼魚など、目的外の生きものを誤って捕獲してしまう「混獲」も大きな問題になっている。この混獲が世界中で起きることで、生態系に重大な影響を及ぼすことが懸念されている。
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こうした商業漁業の問題やヴィーガンフードの需要増を背景に、世界中で持続可能な代替シーフードの開発が進んでいる。スペイン、マドリードを拠点とするMimic Seafoodでは、トマトを使った生マグロ「Tunato」を作っている。
Tunatoはトマト、オリーブオイル、醤油、藻類エキスを原料とし、寿司用マグロの生の切り身を再現している。原料となるトマトは、形や質感を本物のマグロに近づけるために、スペインのアルメニアで栽培されるFinggerinoという品種を使用しているという。
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ヨーロッパ、特にスペインや地中海沿岸の料理にはシーフードが多く使われているが、これまで主にビーフやソーセージといった食肉の代替品に植物性食品が採用されていた。
Mimic Seafood共同創業者兼CEOであるIda Speyer氏は、「だからこそ、私たちは地中海的なアプローチでシーフードに取り組んでいます。最高の品質と妥協のない味。動物性タンパク質を摂らなくても健康になれることを、もっと多くの人に知ってもらいたい。」と話す。Tunatoは寿司をはじめとし、タルタルやサラダ、ピタ、タコスなどの冷たい料理に使用できる用途の広い材料として、既にスペイン国内で販売が始まっている。
日本のマグロの漁獲量は1984年をピークに減少しているが、世界有数のマグロの消費国であることに変わりはない。私たちひとりひとりがマグロをめぐる環境や、代替食品について知ることで、問題の解決に一歩近づくことができるだろう。
【参照サイト】 Mimic Seafood
【参照サイト】 WWF:マグロをめぐる問題
【参照サイト】 WWF:マグロの漁獲量と消費量
【参照サイト】 OPRT:他国の刺身マグロ市場
【参照サイト】 水産庁:マグロ類の漁業と資源調査