
ホテルやレストランで毎日身につける制服や、タオルなどにも使用されている綿素材。最も身近な繊維の一つだが、International Cotton Advisory Committee (ICAC)によると、2019年の世界の農薬市場規模は598億米ドルであり、そのうち約4.7%が綿花農場で使用されたという。農薬は栽培環境を汚染するだけでなく、農業に携わる人たちの健康にも害を及ぼすリスクがある。
そうしたなか、2021年12月に各種繊維品の卸売や輸出入を行う豊島株式会社は、トレーサブル(追跡可能)なオーガニックコットン糸「TRUECOTTON」(トゥルーコットン)」を使用した割烹着が、懐石料理店「山﨑」(東京・乃木坂)に導入されたと発表した。山﨑は、ミシュランガイド東京2019・2020にて一つ星に輝いた、有名店だ。
TRUECOTTONは、綿花農場や紡績工場で働く人が健康で明るい毎日を送ることができる環境でつくられた、安心安全なオーガニックコットンだ。農場から紡績まで一貫管理しているため、「農場と紡績工場」の特定ができるオーガニックコットン糸の提供が可能。また、綿は遺伝子組替えをしていない種子から育てられ、機械摘みによる収穫のため、異物の混入も少ない。
店主、「山﨑」の店主、山﨑志朗氏は今回初めて素材選びから割烹着制作に取り組んだ。山﨑氏は普段食材を扱う中で、食を巡る自然環境の変化を実感しており、将来このままの食文化が続かなくなるのでは、という危機感を持っていたという。普段お客さまの目に一番触れる割烹着を通して、環境のためにできるところから少しずつ取り組みたい、意思表示をしたい、という思いから、環境や生産者に優しい栽培方法がとられており、「どこの、誰がつくったか」を辿ることができるTRUECOTTONの採用に至った。
毎日身につける制服。見た目や着心地にはこだわっても、「素材の背景」にまで関心を寄せている人はまだまだ少ないかもしれない。制服のサステナビリティにまで取り組むことで、お客さまとのコミュニケーションに繋がり、サステナブルなブランディング強化も期待できるのではないだろうか。
【参照サイト】サステナブルであり続けるオーガニックコットン「TRUECOTTON」ミシュラン一つ星獲得の懐石料理店『山﨑』で割烹着に採用。12月より全従業員が着用し導入スタート