
観光業におけるサステナブルな考え方として、「エコツーリズム」が広がっている。エコツーリズムとは、自然や歴史文化など地域固有の魅力を観光旅行客に伝えることによって、その保護と継承に繋げていく仕組みだ。エコツーリズムを通じて住民自身が地域の価値を再認識することで、観光業が盛り上がるきっかけにもなる。
実際に、2013年には環境省から「エコツーリズム推進法」の基本方針が示され、翌年に施行されたことや、コロナ禍で旅行の在り方が見直されている背景もエコツーリズム推進の追い風といえるだろう。また、SDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」の達成に向けて、エコツーリズムによる地域活性化は重要なポイントだ。
さらに、2021年12月に「アイグッズ株式会社」が行ったホテル旅館に関する旅行者の意識調査では、「環境に配慮している宿が好印象だ」と答えた旅行者が全体の71.1%を占めた。エシカル消費に対する人々の意識が高まるなか、ホテルには環境に配慮した取り組みが求められている。
こうした消費者のニーズを踏まえて、全国各地にビジネスホテルを展開する「株式会社東横イン」は、CO2排出量可視化のクラウドサービス「e-dash」を300以上の自社ホテルに導入すると2023年3月6日に発表した。
ホテルは社会インフラとして重要な役割を果たす一方、膨大なごみやCO2を排出している。特にCO2の排出量が多いことは、カーボンニュートラルの実現にとってマイナスだ。
そこで、株式会社東横インでは、各ホテルにおける現時点でのCO2排出量を可視化。具体的な目標を設定し、ホテルスタッフが一丸となってCO2削減に取り組める体制づくりに乗り出した。e-dashの導入にあたっては、スタッフの負担を軽くするためにシンプルな操作性が決め手になったという。また、ホテル支配人を対象とした勉強会を開催し、「やらなければいけない自分ごと」という意識を現場全体で共有するようにしている。
2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行され、あらゆる業界でプラスチック削減の動きが進んでいる。今後、観光業界では、プラスチックやCO2といった環境負荷の大きい要素をどのように減らしていくかが問われるだろう。ホテルや旅館は、運営状態を可視化することでサステナブルな取り組みをさらに強化できるのではないだろうか。
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