魚は、わたしたちの食卓によく登場する食材だ。一方で、いわゆる「アラ」のような魚の可食部以外は、魚類残滓として扱われる。魚類残滓の一部は魚粉や魚油に加工され、畑の肥料や動物の飼料に再利用されるが、そのまま焼却処分されるものも多いという。もし廃棄されている魚の部位を新たな素材にアップサイクルできれば、魚類残滓を減らせるだけでなく、サステナブルなものづくりにも活かせる。
魚の皮をレザー製品に加工するフィッシュレザーブランド「tototo(ととと)」を展開する「株式会社シンクシー」は、国連開発計画(UNDP)の研究所「UNDP Accelerator Labs(アクセラレーターラボ)」と連携し、2023年3月よりオセアニア・サモア独立国の課題解決に取り組むこととなった。
国連開発計画は世界各地にUNDP Accelerator Labsを設置し、開発途上国が抱える課題をサステナブルな方法で解決するために活動している。日本では、2020年からUNDP Accelerator Labsと民間企業が協力して途上国の課題解決に挑む「Japan SDGs Innovation Challenge」を実施。今回、2023年度の活動対象国に選ばれたサモアにおいて、株式会社シンクシーの技術提供が決定した。
島国のサモアでは、沿岸漁業が主要な産業のひとつとなっている。しかし、漁獲量の40~60%は廃棄されており、経済や環境面での損失が大きい。こうした現状を打破し、サモアの経済活性化を図るためには、廃棄される魚を資源に転換していく工夫が必要だ。また、サモアの漁業問題を解決することは、SDGsの14番目の目標「海の豊かさを守ろう」といった複数のターゲット達成にもつながる。
今後、株式会社シンクシーは、サモア国内でフィッシュレザーの製造技術を定着させる計画だという。さらに、ただフィッシュレザーの技術や人材のみを提供するのではなく、現地の人間が自らフィッシュレザーを製造販売できる基盤の構築を目指している。廃棄物を排出しない、サステナブルな漁業体制を作り上げることで、サモアの課題に根本からアプローチできるだろう。
現在tototoではカードケースやウォッチベルトなど、フィッシュレザーを使ったアイテムを販売している。レザーアイテムは、日用雑貨はもちろん、キャッシュトレイやメニューの表紙、アメニティなど、ホテルやレストランの備品として使われるケースも多い。お客さまが手にとるアイテムをサステナブルな観点から選ぶことで、お客さまにお店の姿勢を伝えることができるのではないだろうか。
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