ホテルやレストランにとって、障害者や高齢者などすべてのお客さまが安全で快適に利用できるお店づくりは、サステナビリティにおいて重要な取り組みのひとつだ。
2023年12月、身体障害のある214名に対して、お店を選ぶ基準や店舗を利用する際の行動についての調査結果が発表された。調査の結果によると、「バリアフリー対策されている店舗だと事前にわかったら、お店に行きたい」と回答した人は90.2%だった。また、「利用したバリアフリー対策がされている店舗に再度行きたい」と回答した人は95.7%。さらに、「店舗スタッフの配慮によりバリアが無くなった店舗に、もう一度行きたい」と思う人は98.6%にものぼった。身体に障害を抱える人にとって、お店がバリアフリーに対応しているかどうかは重要な問題だということがわかる。
超高齢化社会に突入している日本にとって、バリアフリーへの配慮は重要項目だといえる。障害のある当事者だけでなく世の中全体での取り組みが求められるなか、「東急ホテルズ&リゾーツ株式会社」は、2024年3月29日、全国の東急ホテルズ(一部を除く、40店舗)で「車いすユーザーに向けたバリアフリールート」をウェブサイト上に公開した。
これまで、ウェブサイト上のアクセス案内は交通機関や所要時間の掲載を主としていたが、今回の取り組みでは段差や傾斜、エレベーターの有無などを盛り込み、車いす使用者向けに最寄りの駅からホテルフロントまでのアクセスルートを選定。全体のマップには「エレベーター」や「スロープ」などのアイコンを掲載したほか、目印となる地点は画像付きで解説し、視覚的にも把握しやすい工夫を施した。
実際に「SHIBUYA STREAM HOTEL」のアクセス案内を見てみると、通路幅が比較的広く、人混みをなるべく避けてスムーズに移動できるルートを案内されているのがわかる。また、出口の多い渋谷駅で迷うことが無いよう、マップ上のアイコンにエレベーター番号が記載されている。
同社はホテル事業を通じて「持続可能な社会」の実現に貢献するべく、2019年に「サステナブル方針」を制定し、「地球にやさしいホテル・まちにやさしいホテル・ひとにやさしいホテル」という3つのサステナビリティを掲げている。2023年には、ユニバーサルデザインおよびユニバーサルマナーに関するリサーチ・コンサルティングを行う「株式会社ミライロ」とともに、「ひとにやさしいホテル」をより深めるための取り組みを開始。今回公開した「車いすユーザーに向けたバリアフリールート」も、その取り組みの一環だ。
- ユニバーサルマナー検定3級を全社員約3,000名が取得(2026年3月末まで)
- カスタマージャーニーを踏まえた「東急ホテルズスタンダード」の更新と全国展開(2025年春予定)
- ウェブサイト上の車いす使用者向け情報の充実(2024年3月29日公開)
「誰一人取り残さない」社会の実現に向け、全世界で取り組むべきとされているSDGs。 外務省は、「我が国のSDGs実施にあたっての指針」の一つとして「多様性が尊重され、すべての人が力を発揮できる包摂的な社会を実現する」ことを挙げている。近年では、こうした指針に基づいて日々新たな法案が審議されており、2024年4月1日には事業者による障害者差別解消法の合理的配慮が義務化されている。
こうした背景から、多くの企業が自社のバリアフリーに関する取り組みを発表しているが、東急ホテルズのように、具体的な取り組み項目とともに達成期限を公表し、進捗を報告している企業はまだそれほど多くはない。多角的な目線から透明性の高い発信を行うことは、お客さまへのサービス向上だけでなく、企業の信頼性の向上にもつながるといえるだろう。
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