飲食業界の2026年世界的トレンドは「自分のための時間」がカギ。最新の調査が発表

「ウェルパ」という言葉を見聞きしたことはあるだろうか?ウェルパとは「ウェルビーイング・パフォーマンス」の略であり、近年、消費者の意識に関わる新たな価値観として注目されている。

そもそも「ウェルビーイング(well-being)」とは「身体的・精神的・社会的に良好な状態」を指し、1946年に採択された世界保健機関(WHO)の憲章にある健康を定義づける一文で用いられた言葉だ。つまり、消費行動を通じて「心身が満たされ、生き生きと健康で過ごせる状態」になれるかが、ウェルパにおける重要な判断基準といえる。

今後ウェルパの考え方が「コスパ」や「タイパ」をも包含し、衣食住をはじめとしたあらゆる分野に浸透していく可能性も十分考えられるだろう。

そうしたなか、世界的な市場調査会社であるInnova Market Insightsの最新調査により、食品・飲料業界における2026年の世界消費者動向も、ウェルビーイングと関連付いていることが明らかになった。

同社は2025年9月に発表した調査結果の背景として、過去12ヶ月間で世界の消費者の85%がストレスを感じていることに言及。原因の多くを占めているのは、個人の財政問題や健康、仕事など身近な問題だという。そのため、消費者は心身ともに健やかでありながら社会や地球にも優しい行動を選び、自分にとって心地良いライフスタイルを模索しているとの見解を示した。

自分のための時間

今回発表された消費者のトレンド5つを紹介したい。

トレンド1:Relaxed Sociability

1つ目は、より健康的で柔軟性のあるライフスタイルに焦点を当てた「リラックスした社交性」だ。調査によると、消費者の59%がフォーマルな夜の集まりではなく、よりカジュアルな社交の場を選んでいることが判明。これにより自宅やレストラン、自然、田舎で過ごす方法が人気となっている。

同時に、食は依然として社会的な絆を築く上で重要な役割を果たしているという。主にミレニアル世代やZ世代、高所得層の消費者が牽引する形で、コーヒーショップの重要性が22%増加。人々が職場や自宅以外の場所でコミュニティ意識を育みながら健康増進を図ることができる「サードスペース」への需要が高まっている。さらにノンアルコール飲料の需要拡大からは、健康と社交をバランスよく楽しみたい消費者の意識が表れているといえる。

トレンド2:Time for Me

2つ目の「自分のための時間」では、消費者が心身を回復するための機会を優先している傾向が読み取れる。調査では消費者の3人に1人が「ストレスを感じている時に一人で過ごす時間が助けになる」と答えており、29%が食事や飲み物を楽しむこと「自分のための時間」の一部だと捉えていた。さらに、消費者の47%がリラックスしてくつろぐために音楽を聴くのが好きだと回答。つまり企業にとって、消費者が一人でリラックスして過ごす時間をサポートする製品や体験を提供することが新しい市場の開拓につながるのではないか。

トレンド3:Vitality & Longevity

3つ目の「活力と長寿」について、消費者にとって睡眠と体重、そして活力が身体の健康に関わる優先事項となっている。実際に、57%の消費者が活力レベルに関する懸念に対処するための行動を起こしているという。
活力と長寿をターゲットとする市場においては、一時的な解決策ではなく、心身のエネルギーを満たすホリスティックなソリューションに着目して持続的な活力を重視する方針も効果的だ。

トレンド4:My Tech Mate

4つ目の「私のテックメイト」が象徴するように、デジタルツールと生成AIは生活な様々な面を簡素化して豊かにするべく、消費者間に急速に導入されている。調査によると世界の消費者の36%がAIに対して肯定的な認識を持っており、こうした傾向は特に若い世代において顕著だという。例えば食品や飲料市場では、AIが食事の準備や調理プロセスを効率化し、ウェルビーイングな生活の実現を後押ししている。最新テクノロジーの活用が進めば、企業と消費者の双方がウェルパにより一層アプローチしやすくなるだろう。

トレンド5:Simplified Life

最後のトレンドは「シンプルな生活」。消費者の29%は精神的な健康が生活をシンプルにする動機になっていると回答し、31%はストレスを軽減する手段として屋外や自然の中で過ごす時間を挙げた。スクリーンタイムの制限によるデジタルデトックスや自然との触れ合い、シンプルで心地よい食べ物や飲み物は、ニーズに合った選択肢のひとつだ。例えば食品ブランドが食事キットの宅配サービスのように簡単で安全に利用できる製品を提供すれば、消費者のストレスや不安を軽減できる。さらにタイパとコスパをクリアしながらウェルビーイングな食体験を届けることで、同業他社との競争優位性を獲得できるだろう。

自分のための時間

消費者がウェルビーイングをはじめとする「自分のための時間を重視する」というトレンドを具体的に理解することで、飲食店では環境に配慮したサステナブルメニュー、ホテルではエコツーリズムに基づく宿泊プランなど、新しい取り組みのアイデアを検討する手がかりになりそうだ。

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【参照サイト】次のトレンド「ウェルパ」はコスパやタイパを包含 お金より「自分のための時間」に価値
【参照サイト】ウェルビーイングとは?研究者・前野隆司教授に聞く幸せな生き方 | 日本財団ジャーナル

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