動物愛護や環境問題に対する意識が高まるにつれ、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という家畜福祉の考えが世界中に広がりつつある。
例えば採卵鶏をケージに入れずに飼育するケージフリーは、アニマルウェルフェアの考え方に則った飼育方法のひとつ。ヨーロッパの中には、鶏の行動が極端に制限されるケージ型の飼育方法を法律で禁止している国もある。
近年では、日本国内のスーパーの店頭などで、ケージフリーで生産された卵「ケージフリーエッグ(平飼い卵)」が選択肢の一つとして並ぶようになってきた。また、外食やホテル、小売など採卵鶏に関わる業界においても、自社で使用する卵をケージフリーに切り替えることを消費者に約束する「ケージフリー宣言」を実践する企業も増えている。

こうした世界的な流れがアジアにも及んでいることは、Lever財団がタイのホスピタリティ業界におけるケージフリー卵の取り組みを検証した「2025 Thailand Hospitality Industry Cage-Free Egg Scorecard」の内容に表れている。
Lever財団は、より持続可能な食料サプライチェーンを構築するべく活動する国際的な非営利団体(NPO)だ。アメリカに拠点を置き、中華圏やインドネシア、フィリピン、タイ、韓国、マレーシア、シンガポールなどアジア中心に現地スタッフを配置。主に「食の持続可能性」と「アニマルウェルフェア」の推進に取り組んでいる。
今回公表された「2025 Thailand Hospitality Industry Cage-Free Egg Scorecard」では、世界中に4つ以上の施設を持つ59のホテルグループを対象に調査を実施。その結果、61%にあたる36グループが、ケージで飼育された卵を事業から排除するタイムラインを設定していることが明らかになった。調査対象となったホテルの全客室数でみると、合計11万5000室以上のうち69%に相当する。

内訳を詳しく見てみると、すでにアマンリゾートやマンダリンオリエンタルなど6つのホテルグループが、タイ国内の全施設で卵の調達を100%ケージフリーへと移行。なかでもCOMOホテルズ&リゾーツのCOMOメトロポリタンバンコクとカペラホテルグループのカペラは自社で掲げた期限よりも早く目標を達成しており、ホテル経営においてケージフリー卵の完全な導入が十分可能であることを示した形だ。
また、マイナーホテルズやケープ&カンタリーホテルズ、オニキス・ホスピタリティ・グループといったタイ国内の有名ブランドを含む28のホテルグループが、2031年までに全面的に実施する予定のケージフリー卵に関するグローバルポリシーを策定。さらにヒルトンやマリオット・インターナショナル、アコーといった主要な国際ホテルブランドでも、タイ市場向けにケージフリー卵の導入基準を制定している。
加えて、シャングリ・ラ・タイランドとSAiiホテルズ&リゾーツの2グループでは、今後数年以内にタイ国内でケージフリー卵のみを調達するという国別目標を掲げている。
しかし、今回の調査によると、まだケージフリーの方針を確立していないホテルグループが23あり、全体の39%を占めている。また、方針を示していないホテルグループにはタイ国内と海外のブランド両方が含まれ、合わせて5万3000室以上の客室を擁する規模だという。

Lever財団は、査読済みの研究論文を根拠に、ケージフリー飼育で生産される卵は、安全性や栄養価に優れるだけでなく、衛生面においても品質向上が期待できるとしている。こうした食品安全およびアニマルウェルフェアの観点からのメリットを踏まえると、現時点でケージフリー方針が未定のホテルグループにおいても、今後その調達へと移行する可能性は高いと考えられる。
さらに、世界的に一般的な卵の価格が高騰する中で、もともと価格変動の小さいケージフリーエッグとの価格差が縮小し、相対的に手に取りやすくなっているとの指摘もある。こうした環境変化を踏まえると、ケージフリーがスタンダードとなる時期は、私たちの想像以上に早く訪れるのかもしれない。
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【参照サイト】61% of Thailand Hotel Groups Commit to Cage-Free Egg Sourcing




















































