農林水産省によると、日本の食料自給率は長期的に低下傾向で推移しており、先進国の中でも最低水準だという。2023年度におけるカロリーベースの食料自給率は38%で、前年度並みに留まった。
その原因には、自給率の高い米の消費量が減少する一方で、海外輸入に依存した生産体制の畜産物や油脂類が多く消費される、といった食生活の変化が挙げられる。今後、食料自給率を向上させるにあたって、「地産地消」を促進するのも有効ではないだろうか。
地産地消における大きなメリットといえば、輸送時のCO2排出量や食品ロスを削減できること。ただ、地産地消は安定供給が難しく、地域によっては生産力の差も生じやすい。こうした課題を解消する手段として、AI技術を活用した海外の農業ソリューションに注目したい。
スウェーデンのスタートアップ企業「Swegreen」は、「Farming as a Service」をコンセプトに、室内で農作物を栽培できる垂直農業ユニットを開発している。この垂直農業ユニットを導入することで、水の消費量やCO2排出量を削減しながら農薬を使うことなく、レタス、ディル、ミント、パセリなど、最大 100 種類の作物を毎日収穫できるようになる。
Swegreenが提供する垂直農業ユニットには、2つのタイプがある。ひとつは、大規模なスーパーマーケットや小売業者向けに設計された「Freja」だ。60㎡の床面積があれば、1日あたり450種類の作物が生産可能だという。もうひとつが、「Saga」と呼ばれる小型タイプ。Small、Medium、Largeの3サイズに分かれ、最大で1日に116種類の作物を収穫できる。こちらは、小規模な食料品店や飲食店、ホテル向きといえるだろう。
例えば、店内でパンを焼いてそのまま店頭に並べるスーパーがあるように、垂直農業ユニットを使って栽培した野菜をそのまま店内で販売することも可能だ。
実際に、2024年6月よりスウェーデンの大手スーパーマーケット「ICA(イーカ)」のRimforsa店では、小型タイプの垂直農業ユニット「Saga」が設置・使用されている。店内で毎週2,000~3,000個のサラダやハーブを生産できるという。近いうちに、別店舗にも導入する予定だ。
Sagaのプラットフォームは、AI技術によって栽培環境を管理。地元産の新鮮な農産物を一年中提供するとともに、従来の農法に伴う環境への負荷を軽減することを目指している。また、サブスクリプションサービスとして利用できるため初期投資が不要である点は、スーパーマーケット側のコスト削減につながるだろう。
Sagaのように小規模な施設内で使用できる垂直農業ユニットは、都市農業の浸透に役立つうえ、顧客にとってもユニークなショッピング体験になるだろう。サステナビリティと実益を両立できる新たなソリューションとして、日本でも普及する日が近いかもしれない。
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【参照サイト】食料自給率・食料自給力について|農林水産省
【参照サイト】地産地消(地域の農林水産物の利用)の推進|農林水産省
【参照サイト】A globally unique in-store farming solution – Swegreen
【参照サイト】SweGreen – Member of the World Alliance
【参照サイト】Meet SweGreen: This Swedish vertical farm start-up grows vegetables inside of supermarkets | Euronews
【参照サイト】Swegreen Launches Vertical Farming Unit at ICA Supermarket in Rimforsa