SDGsに対する認知が年々進むにつれ、人々の消費行動も変化している。消費者のサステナブルに関する行動についての調査によると、SDGs認知者の約53%が「SDGsに取組む企業を応援したい」、約45%が「SDGs関連商品・サービスを購入・利用したい」と回答した。こうした消費者のニーズに応えることは、業界を問わず、企業が継続して発展していくにあたって重要な要素だ。

一方で、企業が行うサステナブルな活動に対して、「グリーンウォッシュ」ではないかどうかを警戒する消費者も増えてきている。グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)とは、「実態とは伴わない取り組みにもかかわらず、環境に配慮していると見せかける」マーケティング手法であり、近年、世界的に問題になっている。カナダでは今年6月、「消費者・労働者・環境を守るため」として企業のグリーンウォッシュを規制する法律が新設され、話題になった。
【関連記事】カナダで、企業のグリーンウォッシュを規制する法律が新設

一般的に、グリーンウォッシュは故意に消費者を騙そうとしたというよりも、客観的な視点の不足によって意図せず起こっている事例も多いとされる。企業単独で取り組むと、どうしてもその正確性や進捗度合いが見えづらくなる可能性は否めない。

グリーンウォッシュとみなされないために、「具体的な目的や成果を公開する」「ステークホルダーの参加を促す」「計画の実行可能性を示す」などのいくつかのポイントを押さえておくことが効果だといわれている。「第三者の目を取り入れる」のも有効な手段のひとつだろう。例えば、サステナビリティに焦点を当てたアワードにエントリーしたり、第三者機関の認証を取得したりすることで、企業の取り組みの信頼性を示すことができる。

【関連記事】グリーンウォッシュと誤解されないためには?押さえておきたい5つのポイント

さまざまな国際的な認証制度があるなかで、アメリカの非営利団体USGBC(U.S. Green Building Council)が開発・運営する「Leadership in Energy & Environmental Design」(以下、LEED認証)では、建築や都市環境のサステナビリティを評価している。

2024年7月7日、このLEED認証のシルバーランクを取得したのが、「ワールド・ブランズ・コレクション ホテルズ&リゾーツ株式会社」が運営・経営するホテル「シックスセンシズ 京都」だ。

2024年4月に開業したシックスセンシズ 京都は、歴史ある豊国神社に隣接する自然派ラグジュアリーホテル。同ホテルでは、開業当初よりLEEDシルバーランクを目標としており、今回の認証取得は、持続可能なホテル設計と運営、自然と調和したデザインなどが評価されたかたちだ。USGBC公式サイトには、新築あるいは大規模な改修のプロジェクトに適用される「BD+C」のシルバーランクとして掲載されている。

LEED認証には6種類の評価システムがあり、それぞれ必須条件を満たしたうえで、選択項目によってポイントが加算される仕組み。対象となる建物や敷地利用の環境性能を精査し、取得したポイントの合計で認証レベルが決定する。認証レベルは、ポイントの少ない順から標準認証、シルバー、ゴールド、プラチナの4つ。なお現在、日本国内の約280施設がLEED認証を受けているという。

10月24日に開催された「GBJシンポジウム2024」LEED認証 表彰式の様子

ここで、シックスセンシズ 京都の評価ポイントを一部抜粋して見てみよう。

ひとつは、エネルギー効率の高いシステムや再生可能エネルギーを使用しているところだ。客室に人感センサーを設置して空調管理を自動化したり、LED照明と自然光を組み合わせて照明を調節したりすることで、標準より20%を超える省エネを実現している。また、水資源の有効活用に注力。雨水利用をはじめ、蛇口やシャワーヘッドなどゲストエクスペリエンスに配慮した節水型器具を選定した。その結果、標準に比べ約45%の削減を実現し、11点中11点のフルスコアを獲得したという。

さらに、設計においても持続可能な工夫を実践している。造園ではもとある地形を活かし、木材や石などの自然素材は地元で調達。地域経済に貢献しながら、建設や運営による環境負荷を最小限に抑えた。ホテルのデザインには豊かな緑が取り入れられ、多くの客室から日本庭園や自然の景観を楽しむことができる。

また、施設面だけでなく、飲食やウェルネス、地域貢献などのサステナブルな取り組みも。レストランや客室には、シックスセンシズのゴール「プラスチックフリー」に基づき館内で浄水して瓶詰めした飲料水を用意。また、レストランではできる限り地産地消と「ゼロウェイスト」のゴールに基づき食材廃棄ゼロを目指しているという。

さらに、宿泊客はサステナビリティツアーに加え、ホテル内の「アースラボ」(シックセンシズのサステナビリティに関する活動を紹介し、持続可能な取り組みを学ぶことができる拠点)と「アルケミーバー」(天然由来の材料を用いた手作り体験ワークショップなどを開催する施設) のワークショップに参加できる。

地域社会貢献活動としては、隣接する豊国神社の未利用地を有機菜園に再生するプロジェクトに取り組むほか、「サステナビリティ基金」を設立し、地元を拠点とする「ビオトープネットワーク京都」「京都伝統文化の森推進協議会」などの団体を支援。支援金は森林の再生と保全や、若い世代が林業の再生とその文化的価値について学ぶ機会を提供するために活用されるという。

シックスセンシズ 京都はプレスリリースのなかで「これからも、自然派ラグジュアリーホテルのリーディングブランドとして、新たな体験価値の創造と発展を、お客様と共に続けて参ります。」とコメントしている。

第3者によるサステナブルな認証の取得に加え、「ホテルだけでなく、ゲストと一緒に続けていく」という姿勢を宣言することで、サステナブルな目標を共有するゲストとの間に共通の価値観が生まれる。今後、ゲストからのフィードバックや協力を通じて、新しいアイデアや実践に発展することもあるかもしれない。シックスセンシズ 京都のこれからの取り組みにも期待したい。

【関連記事】

グリーンウォッシュと誤解されないためには?押さえておきたい5つのポイント

【参照サイト】 シックスセンシズ 京都
【参照サイト】 自然派ラグジュアリーホテル シックスセンシズ 京都『LEED®認証シルバーランク』取得
【参照サイト】 SDGs認知者、「取り組む企業応援したい」は53%
【参照サイト】 LEED rating system | U.S. Green Building Council
【参照サイト】 Six Senses Kyoto Hotel | U.S. Green Building Council

table source 編集部
table source 編集部
table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
Share
This