近年、農業従事者の高齢化が問題になっている。主に農業を仕事にしている人のうち約70%が65歳以上70%を占めるというアンバランスな状況が続いている。一方で、都市農業やスマート農業、省資源型農業など、環境負荷が少なく新しいスタイルの農業は増加傾向にあり、若年層の新規就農を牽引している。
2022年8月2日には、スパイスやハーブなどを製造・販売する大手加工食品メーカー「エスビー食品株式会社」が、自社試験農場にて超省資源型栽培の実証実験を開始したことを発表。
この実験は、持続可能なスパイスやハーブの原料調達を目指し、特許栽培技術「Moisculture(モイスカルチャー)」を持つ「株式会社 CULTIVERA(カルティベラ)」と共同で実施するという。
CULTIVERAが開発した特許栽培技術・Moiscultureは、水分の少ない環境下で、植物が生きるために発生させるという「毛細根」の可能性に着目した栽培方法。特殊なファイバー積層で形成した空間を湿度で満たし、そこで植物を育てることで、植物が元来持っている効率よく水分や栄養を吸収できる微細な「毛細根」を発生・活性。気化水分で育てるため、従来の栽培に比べ、水の消費量を大幅に削減することが可能だ。
さらに、気化水分の量により生育環境を常に調整できるため、水や土の資源消費を抑えながら、栄養価の高い食味の良い作物を育てることができる。
エスビー食品での最初の実証実験対象は、自社試験農場である忍野試験農場で長年研究を続けている「わさび」。Moisculture栽培を導入することで、栄養が均一にいきわたり成長にムラがない傾向があったという。今後、パクチーやチャービル、ディルなどのハーブでも検証を重ねていく予定だという。
日本の農業が縮小することで、食料自給率が低下し、輸入に頼らざるを得なくなる。当たり前に輸入してきた食材でも、外交上の問題や輸入先の政情不安などにより、手に入らなくなるかもしれない。また、「食の安全」に対して高い意識を持つ日本だが、食料自給率が激減する事態が起これば、輸入食材に対して従来の安全性を確保する余裕がなくなる可能性もある。エスビー食品のような大手食品メーカーが、環境負荷の少ない栽培方法を採用することは、日本の農業の縮小を食い止めることにつながるはずだ。
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