近年、報道をはじめ目にする機会が多くなってきた「カーボンニュートラル」。カーボンニュートラルとはCO2の排出量をプラス、吸収量をマイナスとして実質ゼロの状態になることを指す。国連SDGsサイト内の発表によると、食品の生産、加工、流通、調理、消費に関連するすべての要素と活動をまとめたフードシステムが、CO2とはじめとする温室効果ガス排出量全体の37%を占めているという。
持続可能な飲食業を実現するために、業界全体でカーボンニュートラルに取り組むことが重要視されているなかで、2022年10月4日、「リンナイ株式会社」と「トヨタ自動車株式会社」は、水素を燃焼させて行う「水素調理」に関する共同開発開始を発表した。この開発には同2社の他、トヨタ自動車株式会社の子会社であり、研究や新事業機会の創出などを行う「ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社」も参加するという。
リンナイとトヨタは、「カーボンニュートラルの実現」というそれぞれの方針を共有。静岡県裾野市にてトヨタが建設を進める実験都市「Woven City(ウーブン・シティ)」などで行う実証を通じ、調理時にCO2を排出しない水素調理の最も安全で効率的な燃焼方法を検討していく。同時に、水素調理が食材に与える味や風味などへの効果を科学的に検証するという。
ニュースリリースのなかで、リンナイの代表取締役社長・内藤弘康氏は「エネルギーに深く関わるメーカーとしてトヨタの構想に強く共感するとともに、Woven Cityに参画できることを大変嬉しく思います。リンナイは生活に密着した家庭用の商品を提供していますので、この共同開発は調理機器という分野で強みを生かせることができ、さらに地球環境に貢献できるという相乗効果の広がりを感じます。またこのようなテーマに携わることができる喜びを噛み締めながら、Woven Cityの実現、さらにはカーボンニュートラルの実現に向けて全力で取り組んでいく所存です」と述べている。
また、トヨタの取締役執行役員であり、ウーブン・プラネット代表取締役CEOのJames Kuffner氏は、「調理機器のスペシャリストであるリンナイとともに、新たな水素の使い方にチャレンジできることを大変嬉しく思います。CO2を排出する現在のプロパンガスや天然ガスを用いた調理方法に対し、サステナブルなエネルギーによる水素調理で新たな食の体験の提供に取り組み、ともに持続可能な社会への貢献を目指します」と語っている。
カーボンニュートラルの観点から注目を集める「水素調理」だが、現時点ではまだまだ電気やガスを使った調理器が主流だ。トヨタやリンナイのような大手企業が開発を進めることで、水素調理器が選択肢に加わる日もそう遠くはないかもしれない。
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