国土の3分の2が山林で覆われる日本は、世界でも有数の森林大国だ。一方で、輸入自由化の影響で国産材の需要が減り、現在利用されている国産の木材は3割程度。山林には7割の木材が残されたままになっており、手入れが行き届かずに放置された木材が環境に悪影響を及ぼすことが問題視されている。例えば、樹木が密集した山では日光が地面まで届かないため下草が生えず、土壌が水を吸収しきれないことが土砂災害の要因の一つになっていたり、樹齢の長い木が増えることで二酸化炭素の吸収量が減り、地球温暖化を加速させたりといった課題がある。
そうした中、2020年に株式会社fabriq(東京都渋谷区、代表 高平晴誉)と石川県白山市のアロマ蒸留所EarthRing(代表 大本健太郎)は、「木を使い山を育てる」というミッションのもと地域共創プロジェクト「QINOプロジェクト」を始動。2021年7月より、クラウドファンディングMakuakeにて白山市のクロモジ(クスノキ科の落葉低木)の蒸留水を使った炭酸飲料「QINO(キノ) SODA」の発売を開始した。
これまでアロマ精油の原料として活用されてきたクロモジ。精油1mlを作る際にできる蒸留水はその100倍の1Lだが、使用用途が少ないため、現状ではその多くが未利用のまま破棄されていた。QINO SODAは精油成分が染み込んだ、奥行きのある芳香を持つクロモジ蒸留水を活用することで、破棄されるはずだった自然の資源に新たな価値を見出した。
木の香りを味わうことができるプレミアムな炭酸水QINO SODAは、お酒の割材やノンアルコールカクテルの材料としてもおすすめだ。また、fabriqの調べでは、クロモジの蒸留水に口腔内細菌に対する抗菌効果が確認されたという。
SDGsにも大きく貢献しているこのプロジェクト。商品の利益の一部を今後のプロジェクトや山林保全に還元したり、商品の梱包、発送を就労支援施設へ委託することで、障がいを持つ人々の雇用機会を創出したりもしている。また、現在は、白山市を拠点に、地元の自然や生業の魅力を未来へ伝える木育授業「QINO school」を小学生に向けて実施している。今年の10月には時空をこえた循環をまるごと味わう「QINOレストラン」を期間限定で開催する予定だ。
近年、日本で毎年のように土砂災害が起き、甚大な被害が発生している。予期せぬ災害に怯える日々から抜け出すには、QINOプロジェクトのような環境保全活動が各地で行われ、山林が健全であり続けることと同時に、山林の資源に価値が見出されることで経済の循環を生み出すことも重要だ。
【参照サイト】樹木からうまれたプレミアムな炭酸水 木の香りを味わう『QINO SODA』Makuakeにて販売開始
【参照サイト】「木のソーダ」で山林を救う 石川県白山市の循環型プロジェクトとは