
海岸の漂着ごみというと、ペットボトルや発泡スチロールなどのプラスチックゴミを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。実は、漂着したごみの内、人口物は4割で、海藻や流木などの自然物のごみが6割を占めている。
時間が経てば自然に還る自然ごみだが、「漂着海藻」は長時間放置すると腐敗が進み、虫が湧き、悪臭を放つ厄介ものだ。砂浜に埋めて処分するのが一般的だが、海水を多く含む海藻は重たく、処分するのにも重機が必要だ。しかし、進入路がなかったり機械を所有する人がいなかったりするために、人の手を介さなければならないことも多い。また、多くの海水を含み、塩分が炉を痛める原因となるため、焼却処理施設に海藻を受け入れていない自治体もある。
そんな漂着海藻を原料とした新しい食材が注目を集めている。
熊本県水俣市にある、株式会社Mr.Orangeが開発した「プチル(旧商品:みずたまご)は、漂着海藻から取れるアルギン酸からつくられる粒状の食品。味や色・香りのついた液体に、プチルを24時間漬け込むだけで、味が定着する。
もともと、ソースなどをゼラチン質の膜で覆い球状にする「スフェリフィケーション」と呼ばれる調理技術が存在するが、特殊な技術が必要とされることから、日本ではごく一部のレストランでしか使われていなかった。プチルを使うことで、料理・スイーツ・ドリンクなどジャンルを選ばずに、誰でも簡単にスフェリフィケーションを再現することができる。また、時間が経ってもプチッとした食感はそのままだ。
また、動物性原料を使用していないため、ヴィーガンなど動物性食品を避けている人も口にすることが可能だ。
公式サイトでは、家庭向けの少量サイズも販売されているので、誰でも気軽に試すことができる。プチルのような、作り手の創作意欲をかき立てるユニークな食材を取り入れることで、新たな食の楽しみを提案できるのではないだろうか。
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