廃棄パンからパスタへ

まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品ロスを減らそうと、近年、食品関連業をはじめさまざまな業界で対策が進んでいる。そうした動きの効果もあってか、農林水産省の公表したデータによると日本における2023年度の食品ロス量は464万トンで、前年度より8万トン減少したという。

一方で、流通経済研究所が2019年に行った「日配品メーカーの食品ロスの実態調査」によると、乳製品や豆腐、納豆などに比べ、パンの余剰生産発生率が高いことが分かっている。余剰生産されたパンは、約80%がリサイクルを含めて廃棄処分されているという。今後、食品ロスをより一層削減していくには、パンのように廃棄量の多い食品に着目してアプローチするのも有効な手段ではないだろうか。

ひとつの事例として、デンマークでは「Eat Wasted」が廃棄されるパンに新たな命を吹き込み、食品ロスの問題に貢献している。

「Eat Wasted」は、カナダ出身のLeif Friedmann氏とメキシコ出身のJorge Anguillar Lopez氏がコペンハーゲンを拠点として2022年に設立した企業。過去には、Leif Friedmann氏が「Licked Media」からラーメンチョコレートバーというユニークなスナックを販売していた。また、Jorge Anguillar Lopez氏は蒸留酒を扱う「Empirical」でクリエイティブディレクターを務めた実績がある。

これまで既存の枠組みにとらわれず食品業界に関わってきた2人のアイデアから誕生したのが、アップサイクルパスタ「Casarecce Di Pane」だ。

「Casarecce Di Pane」はカサレッチェと呼ばれるショートパスタの形状をしていて、ソースに絡みやすいのが特長。その原料には回収した廃棄予定のパンが25%再利用され、伝統的な製法によって作られている。また、卵を使用していないため100%ヴィーガンに対応。パスタ特有の風味や食感を損なうことなく、持続可能性という新たな付加価値を与えた。消費者がこのパスタを1kg購入すれば、パン半斤に相当する廃棄物の削減につながるという。

さらに「Eat Wasted」のサステナブルな取り組みは、商品の開発だけに留まらない。既存のリソースをより有効に活用して飢餓を減らすという目標に向け、売り上げ1kgごとにパスタ1人前を非営利団体の「Food for Soul」に寄付する仕組みを導入している。

Food for Soulでは、世界中のシェフやパートナー、ボランティアと協力して余剰食品を栄養価の高い食事に作り変え提供している。こうした活動によって食品廃棄物を減らせるのはもちろん、社会で孤立する人や困窮する人を支援するコミュニティの構築にも役立っている。

Eat Wastedの公式サイトによると、現時点(2025年12月)で140,100枚のパンを救済し、7,740食のパスタを寄付しているという。

レストランやカフェなどの飲食店でサステナブルな食材を取り入れる際に、食品ロスのアップサイクルという視点からさらに一歩踏み込み、そうした食材の売り上げがどのように活かされているのかにも注目してみてはどうだろうか。

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廃棄予定のパンの耳から生まれたアップサイクルビール、発泡酒が発売開始

【参照サイト】Food for Soul
【参照サイト】Eat Wasted
【参照サイト】Pasta from bread: Reinventing cooking with old bread – Circular Economy For Food
【参照サイト】農林水産省:事業系食品ロス量(2023年推計値)を公表
【参照サイト】流通経済研究所:これまでのワーキングチームによる 食品ロス実態調査結果、および事例の紹介

table source 編集部
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