近年、消費者のサステナビリティに対する意識の高まりに伴い、「持続可能な農業」への関心が高まっている。2024年2月に公開された内閣府の世論調査では、環境に配慮した生産手法の農産物の購入に対する質問で、「今後購入したい」と回答した人が80.7%にものぼった。また、64.8%の人が「価格が高くても購入する」回答している。
さらには、サステナブル意識が高いといわれるZ世代の4人に1人が「農業をやってみたい」と考えていることもJA共済の調査で明らかになっている。かつてはキツい、儲からないというイメージの強かった農業が、若い世代を中心に、社会や地域に役立つ、「ウェルビーイング(well-being)」な職業としてポジティブに捉えられつつあるようだ。
そうしたなか、農業分野での新たな雇用創造と心豊かな生活の創造に向け、“持続可能な農業”の実現に取り組んでいるのが、総合人材サービスの大手として知られる「株式会社パソナグループ」だ。
パソナグループが農業分野に注目しはじめたのは今から約20年前に遡る。地方における雇用創造の可能性を模索するなかで、それまで全く光の当たっていなかった“農業”に可能性を見出した。
2003年には、中高年を対象にした「農業インターンプロジェクト」をスタート。その取り組みは中高年から若者にも広がり、多くの人が農業にチャレンジし、農業分野に人材を流動化させる新しい仕組みを構築。2008年からは兵庫県淡路島で、農業の活性化・独立就農を目指すチャレンジファームを皮切りに、人材誘致による独自の地域活性事業に取り組んでいる。
2011年には、これから農業を担う新しい発想と知識を持った人材を確保・育成することで、農業分野における更なる雇用の創出を目指すため「パソナ農援隊」を設立。2021年からは淡路島に、サステナブルガーデン「Awaji Nature Lab & Resort」をオープンし、農・食・住の体験を通じ、持続可能なライフスタイルを提案している。
さまざまな取り組みを進めてきた同社だが、2024年6月5日には、有機栽培による自然派ワインの生産を目指す「自然循環型ワイナリー」を開設することを発表した。ワイナリーは「Awaji Nature Lab&Resort」近郊の淡路市野島常盤にて、2025年春頃に開設予定。
今回開設する「自然循環型ワイナリー」では、フランスで自然派ワインを造り続け、世界的評価を得た栽培醸造家・大岡弘武氏をアドバイザーに迎え、自然の力を最大限に活かした環境負荷の少ないワイン生産に取り組むという。ワイン生産のため栽培するブドウは、ヤマブドウを主体に品種改良して作られた、日本でも有数の地でしか栽培されていない特別なブドウ品種「りざん」「龍王」を採用。
ブドウ栽培からワイン醸造までの全過程で有機栽培を推進するとともに、淡路島で運営する自社飲食施設や連携する水産加工業者からの食品残渣や、牧場や乗馬クラブの牛糞・馬糞、もみ殻などを堆肥化した肥料でブドウを育てる、持続可能な“循環型農業モデル”を構築するという。
また、将来的にこのワイナリーは、自然循環型農業の魅力を体験できる観光農園としても開放予定。見学ツアーやワインテイスティングイベントなどを通じて、地域の特産品であるワインの魅力を発信することで、淡路島全体の観光振興への貢献や農業関係人口の増加を目指すという。
創業以来「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、ソーシャルソリューションカンパニーとして、人々の心豊かな生活の創造に取り組んできたというパソナグループ。長年にわたる農業に対する取り組みには、業界全体の活性化をはじめ地方創生や人材育成など、多角的な人材サービスに携わってきた同社の姿勢や強みが活きている。今回紹介したワイナリーのプロジェクトもまた、人や社会の「ウェルビーイング(well-being)」の実現に通じる取り組みだといえるだろう。
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【参照サイト】 Awaji Nature Farm 『自然循環型ワイナリー』 2025年春開設
【参照サイト】 内閣府:食料・農業・農村の役割に関する世論調査
【参照サイト】 JA共済:農業に関する意識・実態調査
【参照サイト】 Z世代のキャリア観に関する意識調査