世界有数の紅茶の産地として知られる、スリランカ。近年、スリランカ南部に位置するシンハラージャ森林保護区のふもと地域では、紅茶栽培による農地拡大や、農薬・化学肥料の多用による汚染で生態系の破壊、土壌の劣化が問題となっている。このシンハラージャ森林保護区は、スリランカ固有の多様な動植物の生息地で、1978年にユネスコの生物圏保護区に指定され、1988年には世界遺産リストにも登録された、希少性の高い熱帯雨林だ。

この地域で、2011年から環境へ負荷をかけない有機農法への転換を望む紅茶農家を支援しているのが、「特定非営利活動法人パルシック」だ。2021年12月、パルシックでは同法人が支援する紅茶農家の畑で、有機の茶葉や果物、野菜とともに育てた有機ブラックペッパーの販売を開始した。

さまざまな作物とともに豊かな土壌で育ち、ひと房ずつ丁寧に手摘みしたブラックペッパーは、爽やかな香りと力強い辛味が特徴的で、新鮮なためミルでの挽き心地がやわらかだという。価格は50g¥648(税込)で、パルシックの運営するフェアトレードショップ「Par Marche(パルマルシェ)」で購入することができる。

パルシックは国際協力やフェアトレードを行うNGO だ。同団体はスリランカで小規模紅茶農家の共同出荷グループの形成、有機栽培の転換、コンポストセンターの運営、エコツーリズなどの支援を通して、環境を守りながら地域をよりよくするための活動をしている。

フェアトレード(Fair Trade : 公平貿易)は、発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場が弱いとされる生産者や労働者の生活を助ける貿易の仕組みだ。一般的な貿易では、輸入業者が大きな利益を得る一方で、生産者は販売価格のほんの数パーセントの収入しか得られないという、不公平な取引が起きる場合がある。また、不安定な生産を無理して続けることで、人だけでなく生産地の環境へも負荷がかかってしまう。

新型コロナウィルス感染症拡大で日本全体の経済成長が伸び悩む一方で、国内のフェアトレード市場は拡大を続けており、2020年の市場規模は131億円にものぼる。それでも、ヨーロッパなどの諸外国と比較するとまだまだ市場規模は小さい。飲食店で欠かすことのできないスパイスを、ひとつでもフェアトレード商品に切り替えることで、食材の生産者や現地の環境を考えるきっかけになるのではないだろうか。

【参考サイト】 生物多様性の森からスリランカ産有機ブラックペッパーが新登場!
【参考サイト】 オンラインショップパルマルシェ(ParMarche)
【参考サイト】 <国内海外フェアトレード市場動向>国内市場規模131.3億円とコロナ禍にも関わらず伸張

table source 編集部
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table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
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