捨てられるものや古くなったものに新たな付加価値をつけて、別の新しい商品に生まれ変わらせる「アップサイクル」。世界の人口が増え続けている今、このままのペースで生産・消費を続けていくと地球上の資源が足りなくなることが懸念されており、資源の循環や廃棄物削減に貢献する手段のひとつとして期待されるプロセスだ。
2022年の消費者調査では、全体の半数以上(54.4%)の回答者が「非アップサイクル品と比較して価格が高くてもアップサイクル商品を購入する」と回答。この結果からは、限られた資源を有効に利用し、不要になったものを再び資源として活用する資源循環型の社会システムの重要性が消費者にも浸透しつつあることがわかる。
アップサイクル商品への消費者の注目が集まるなか、株式会社ロイヤルホテルは2024年4月4日、ユニークなアップサイクルの取り組みを発表した。
株式会社ロイヤルホテルでは、運営する「リーガロイヤルホテル(大阪)」のテイクアウトショップ「グルメブティック メリッサ」にてケーキやパン、総菜などさまざまな商品を販売している。今回、店頭で売れ残って廃棄になってしまう食事パンを無償で提供し、インテリアライト「パンプシェード」としてアップサイクルする。
「株式会社PANTHEM(パンセム)」が手掛けるパンプシェードは、本物のパンを使用して製造するインテリアライト。アーティスト・YUKIKO MORITA氏がパン屋で働いていた際、廃棄されるパンに心を痛め、5年以上かけて生み出したアート作品だ。本物のパンをベースに、特殊な加工をしているため、半永久的にリアルな見た目がキープされる。
今回の取り組みでは、グルメブティック メリッサで人気の「ロイヤルリッチシフォン」や「バゲット」などの食事パンを冷凍保存し、2週間に一度の頻度で提供。提供したパンは職人たちによって丁寧に中身をくり抜かれ、2週間ほどかけてパンプシェードとして生まれ変わり、販売される。現在、リーガロイヤルホテルの公式オンラインショップでも、その一部が販売中だ。
なお、2024年4月現在販売しているパンプシェードはロスパンを使用しておらず、今回の仕組みが整えられたことにより、順次ロスパンを使用したものへと移行していく予定だ。ロイヤルホテルでは、今後もPANTHEMと廃棄パンを活用した共同開発を進め、食品ロスの削減に努めていくという。
今回ロイヤルホテルが発表した取り組みは、日々の営業で発生するパンの廃棄ロスを減らす目的でスタートした。食品ロスを含む廃棄物の削減は、SDGsの12番目の目標に「つくる責任、つかう責任」とも密接に関係しており、世界的に取り組まなくてはいけない喫緊の課題だ。
こうした課題解決を進めるためにも、さまざまなアップサイクル商品が消費者の日常に定着していくことが望ましい。このパンプシェードのように、義務感からではなく、消費者が楽しみながら暮らしに取り入れられるアップサイクル商品は、そうした課題解決を後押ししてくれる心強い存在だといえるだろう。
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