アメリカ発、精密発酵による植物由来の甘味タンパク質。日本企業の追加出資も発表

植物由来 甘味タンパク質

砂糖は人間の食生活に欠かせない甘味料のひとつだ。しかし、その生産過程においてはさまざまな環境・社会課題が発生している。例えば、砂糖の原料となるサトウキビを大量に栽培するために焼き畑農業や森林伐採が横行。環境破壊が加速するにつれて、生物多様性も失われている。また、農園での児童労働や先住民からの土地搾取といった、人権侵害につながる生産地の実情も看過できない。

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砂糖の問題をめぐって、近年では代替品への関心が高まっており、代替甘味料の市場規模は2029年までに147億1000万ドルに達すると予想されている。

そうしたなか、アメリカのスタートアップ企業である「Oobli」は、砂糖に代わるサステナブルな甘味料として植物由来の甘味タンパク質を開発した。
西アフリカ産の2種類のベリーを使用し、低カロリーでありながらショ糖より最大で2000倍も甘く感じるところが特徴。その仕組みは、甘味タンパク質が舌にある甘味に関連する味覚受容体と結合して活性化することで、砂糖の甘みを模倣するからだ。舌と相互に作用した後は、体内で単なるタンパク質として分解される。

そのため、砂糖や従来の代替甘味料のように血糖値の急上昇を引き起こすこともなければ、腸内環境に悪い影響を与えることもないという。さらに、精密発酵によって生産される甘味タンパク質は低コストで利用可能。サトウキビ栽培と比べて広大な農地を必要としないうえに、水の使用量や炭素排出量を減らせるメリットもある。

Oobliは、アメリカで初めて甘味タンパク質を甘味料として販売する規制認可を受けた唯一の企業だ。これまでに、日本の厚生労働省にあたるDHHS(米国保健福祉省)に所属するFDA(米国食品医薬品局)から「No Questions Letter(異議なし)」の通知を2件受領した。そのなかで、4種類のプロテインが一般に安全と認められる物質のステータス「自己認証GRAS」を、そして1種類のプロテインがフレーバー用途のGRASである「FEMA GRAS」を取得している。

また、同社は独自の甘味タンパク質を使用したチョコレートを販売。同時に甘味タンパク質技術のプラットフォームとして企業との提携を進め、より美味しく健康に良い製品を手頃な価格で提供できるように取り組んでいる。

植物由来 甘味タンパク質

日本国内でも、甘味タンパク質への期待が高まりつつある。2025年2月、「グローバル・ブレイン株式会社」が運営するKIRINグループのCVCファンド「KIRIN HEALTH INNOVATION FUND」と「農林中金イノベーション投資事業有限責任組合」が、Oobliへの追加出資を発表した。すでにグローバル・ブレイン株式会社には、2022年5月にこの2つのファンドを通じて出資を実行した実績がある。
今回の追加出資にあたって、同社はOobliが有する研究開発力の高さや代替砂糖市場の高いポテンシャル、健康課題と環境保全に対する使命感と熱意を評価したという。今後はOobliの健康的な甘味タンパク質を使用した食品の海外事業展開を加速させるなど、多面的に支援したいとしている。

フードテックの進化により、今後も食の選択肢は広がっていくだろう。一方で、技術の発展の背景には常に深刻な課題が存在している。こうしたニュースをきっかけに、砂糖をめぐる課題について考えてみてはいかがだろうか。

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【参照サイト】Oobli teams with Ingredion to jumpstart market for protein-based sugar alternatives | Food Dive
【参照サイト】Oobli earns FDA GRAS status for monellin | Food Dive
【参照サイト】Global Alternative Sweetener Market Research Report 2020-2029
【参照サイト】Oobli
【参照サイト】植物由来の甘味タンパク質を開発するOobli, Inc.へ追加出資

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