近年、世界全体で人口が増加傾向にある。国連は2019年度の世界人口推計において、世界の人口が2030年には85億人、2050年には97億人にまで達すると予測している。
人口が増えるほど、食料の消費量も増大する。例えば魚介類では、世界では1人1年あたりの消費量が過去50年間で約2倍に増加しているという。水産資源に対する需要が高まる一方で、漁獲量を確保するために乱獲や混獲が横行している。こうした漁法は生態系を破壊し、水産資源の安定供給をますます難しくするだろう。
水産資源を次世代へと引き継ぐには、持続可能な生産体制を築くことが重要だ。ひとつのモデルケースとして、「株式会社FRDジャパン」が陸上養殖する「おかそだちサーモン」に注目したい。
サーモンの養殖では海面養殖が一般的だが、飼育水の排出によって海を汚染する恐れがある。また、サーモンの養殖には海水温の高いアジアよりも寒冷地の方が適しており、輸入コストがかさむ点も問題だ。そこで、株式会社FRDジャパンは、サーモンの海面養殖における課題解決に向けて独自に「閉鎖循環式陸上養殖システム」を開発した。
このシステムでは、高度なろ過技術で水質を維持したまま人工海水を閉鎖循環させるところが特徴だ。天然の海水や地下水を介してサーモンが細菌感染するリスクを減らせるので、抗生物質は不要。また、海水の冷却コストがかからない分、従来の陸上養殖と比べて電気代を削減できる。
たとえ内陸部でも、消費地近郊にプラントを設置すれば、鮮度の高い商品をより低コストで輸送することが可能。実際に、おかそだちサーモンは東京都に近い千葉県木更津市で養殖されている。新鮮で脂の乗ったサーモンが、年間を通じて供給できるのは大きな強みだ。おかそだちサーモンは、環境と人間に優しいサステナブルな食材といえる。
おかそだちサーモンのサステナビリティには、大手企業も関心を寄せている。全国でコンビニエンスストアを運営する「セブン-イレブン」は、東京都や千葉県の一部店舗にて、おかそだちサーモンを使用した「クリームチーズ仕立てスモークサーモンサラダ」を、2023年8月1日から8月19日までの期間限定で販売。サステナブルな原材料で作られる「みらいデリ」シリーズとして登場した。
SDGsの「12.つくる責任つかう責任」や「14.海の豊かさを守ろう」といった目標を達成するには、サステナブルな食材の開発はもちろん、消費を促進する取り組みが欠かせない。飲食店でも、おかそだちサーモンのようなサステナブルなシーフードを使ったメニューを考案して、水産資源の保護とおいしい魚料理の提供を両立させてはどうだろうか。
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