持続可能な畜産業の実現へ。沖縄の大学と排水処理メーカーがライセンス契約を締結

食肉や牛乳、卵などの畜産物は、私たちの食生活に深く根付いた重要な食料だ。世界的な人口の増加や貧困率の改善などにより、今後これらの需要はさらに高まると見込まれており、生産体制の拡大も進むと考えられている。

一方で、畜産には家畜の排せつ物による悪臭や温室効果ガスの発生といった、環境への負荷が伴うのが現状だ。さらに、適切に処理されない排せつ物が引き起こす水質汚染は、人体への影響という観点からも見過ごせない問題となっている。

OISTとライセンス契約を締結

こうした課題の解決に向け、沖縄県国頭郡恩納村の「学校法⼈沖縄科学技術⼤学院⼤学学園(OIST)」と水処理の総合メーカー「ニッコー株式会社」は、新たな排水処理技術の実用化に向けて、2025年3月21日にライセンス契約を締結したことを発表した。
本契約を通じて、OISTとニッコーは長年の基礎研究に基づいた技術を実用化させ、国内外の畜産業の環境負荷軽減と持続可能な社会の実現に貢献することを目指すという。

沖縄県の養豚業は、県の農業生産額の4割以上を占めている基幹産業だ。OISTの生物システムユニットは、2017年より「一般財団法人沖縄県環境科学センター」「沖縄県畜産研究センター」と共同で、養豚場から排出されるリンやアンモニアなどの有機物や、今後に規制強化が予想される硝酸性窒素を同時に処理する新しい排水処理技術の開発に取り組んできた。

OISTとライセンス契約を締結

この技術は、微生物を活用することで低メンテナンス・低ランニングコストでの処理を可能とし、従来の排水処理に伴う環境負荷を大きく軽減できる点が特長。排水から発生する悪臭対策にもつながる。現在は特許出願中で、2019年から沖縄県畜産研究センターの養豚場で実証試験を行っている。

2021年からは、ニッコー株式会社と連携し、本技術を搭載した浄化装置のスケールアップとさらなる実証試験を進めてきた。そして今回発表されたライセンス契約により、ニッコーは装置の開発を本格化し、実用化に向けた取り組みを加速させていくことになる。今後は、実際の運用に近い環境で検証を重ね、2027年度中の実用化を目指している。

また、この新技術は沖縄県内にとどまらず、将来的には国内の他地域や海外の畜産業への展開も視野に入れており、持続可能な畜産業の発展に貢献することが期待されている。

OISTとライセンス契約を締結

今回の取り組みは、大学の研究成果が企業と結びつくことで実用化に向けて本格的に稼働するという点でも意義のあるものだ。「自分たちの技術を活かし、課題の解決に貢献したい」という志を共にするもの同士が協力することで、大きな社会的インパクトを生み出すことが可能になる。

特に、環境負荷の低減と畜産業の持続可能性という両立が求められる今、本技術の実用化は新たなモデルケースとなりうる。研究機関と企業、そして地域社会が一体となって課題解決に挑む姿勢が、これからの技術開発のあり方を示しているといえそうだ。

【参考サイト】学校法⼈沖縄科学技術⼤学院⼤学学園

【参考サイト】NIKKO:沖縄科学技術⼤学院⼤学学園(OIST)と革新的排水処理技術の実用化に向けライセンス契約を締結

table source 編集部
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