輸送におけるCO2の削減や食品ロス削減、顧客満足度の向上、地域とのつながりの強化などさまざまな効果が期待できる「地産地消」の取り組み。最近では、多くのホテルやレストランで地産地消の食材の採用やメニュー開発がはじまっているが、その多くは店舗の近隣に生産者がいるからこそ実現している。農地が限られ、生産者の少ない“都心”で地産地消を実現することに難しさを感じている人も多いのではないだろうか。

2022年7月20日、都心にある飲食店の地産地消の取り組みを支援するため、table sourceを運営する老舗洋食器メーカー・ニッコー株式会社は「to TABLE〜東京で取り組む 地産地消〜」と題したイベントを開催した。会場は、東京都渋谷区富ヶ谷にあるニッコーの東京ショールームに併設されているイベント&キッチンスペース。

イベントでは、神楽坂の農業ベンチャー企業「株式会社アグリコネクト」が運営する、東京都日の出町の農場で作られた「日の出野菜」を紹介。同時に、化学調味料無添加や安全で健康的な食材と調理法にこだわる「株式会社 イタリアンイノベーションクッチーナ」による、日の出野菜を使った調理実演と試食も行われた。

アグリコネクトの河合氏によると、自社運営の「日の出農場」では、鮮度の高い東京野菜をいつでも届けられるよう、野菜の通年栽培、通年出荷を目標としているという。また、同社では農場の運営に加え、八百屋の運営、飲食店への卸事業を自社で一貫して行うことで、持続可能な農業の実現に取り組んでいる。自社定期便では、野菜の配達とともに、前回配達分の残り野菜をその場で回収。回収した野菜をコンポストで堆肥化し、自社農場で再利用することで食品ロスの削減にも努めている。

また、日の出農場認定農業者の浅利氏からは、強いこだわりを持つ日の出農場の「土」についての説明があった。土壌における三大要素「物理性」「化学性」「生物性」のなかでも、土壌に含まれる有機物や微生物にあたる「生物性」を重視。無農薬・有機肥料による栽培を行うことで、より豊かな土壌形成に必要な微生物の多様性を保っているという。こうした土づくりの取り組みが評価され、「オーガニックエコフェスタ2022冬」で優秀賞を受賞している。

河合氏は、アグリコネクトの今後の取り組みについて「まだまだ農業ベンチャーとして未熟な私たちですが、東京でつくって、自分たちで運ぶ。そして、自分たちも八百屋として売る。自分たちでも売ることでお客さまの声に耳を傾けながら、美味しい野菜をもっとより広く、たくさんの方にお届けできるように日々試行錯誤を繰り返しています。つかう人と、つくる人をもっとシンプルに、そしてダイレクトにつなげることで農業や、飲食業界が野菜をとおして、もっと面白くなる未来を目指しています。」と話す。

また、株式会社イタリアンイノベーションクッチーナによる調理実演では、日の出野菜を使った計4品が振る舞われた。

・朝採れサラダハーブのサラダ
・産地直送のビーツと紫キャベツのおつまみ
・産地直送のビーツの冷製スープ
・サラダハーブとパプリカ、人参のグリル

いずれも野菜を主役にした料理でありながら、同社の掲げる化学調味料無添加というこだわりによって素材の味が充分に活きた、食べ応えのある一皿に仕上がっていた。

イタリアンイノベーションクッチーナの取締役社長、青木氏は同社の理念を「私たちイタリアンイノベーションクッチーナは、『料理を通して関わる人を幸せにし未来を創る』この理念をもとに店づくり、人づくりを行い、街に応援され必要とされる店舗を目指しています。私たちは『食』で人と街とそれぞれの地域を笑顔にし、活力を与えられる存在でありたいと考えております。
私たちの事業は、沢山の人を笑顔にできる可能性に溢れる“志事”だと思っています。私たちの志事の先には沢山の命があります。それは「イタリアンイノベーションクッチーナ」で働く仲間たち、仲間たちの家族、お客さまはもちろん、生産者さま、協力会社さまの命。食べ物は命を守り命を創ります。
だからこそ、健康的な食材にこだわり続け、旬の食材を活かし料理人としての想いを込めた料理で人に活力を与えていきたいと考えております。そして、料理と接客を磨きつづけ、『食』の力で、人と街に灯をともし、エネルギー溢れる世界を創造していきたい。そんなお店を創り続け、沢山の笑顔を増やしたいと考えています。」と語った。

協力:株式会社アグリコネクト

協力:株式会社 イタリアンイノベーションクッチーナ

また、アグリコネクトとイタリアンイノベーションクッチーナは単なるビジネスパートナーではなく、イタリアンイノベーションクッチーナが定期的に日の出農場を訪れ、農業体験を行い交流しているという。実際に生産者と顔を合わせることでその想いを受け止め、自社の扱う食材となる野菜に直接触れることで、最大限に素材を活かした調理を行うことができる。

今回のイベントを主催したニッコー株式会社(table source)が行った2020年の調査によると「食材の産地や安全性も意識するか」というアンケートに対して半数以上が「意識する」と回答しており、地産地消に対する消費者の意識が高いことがうかがえる。

取り組むのが難しいと思われがちな都心での地産地消。今後もニッコー株式会社(table source)では、こうした飲食店のサステナビリティに関する課題を解決すべく、さまざまなイベントやセミナーを開催予定だ。イベントに参加することで、知識やヒントを得るだけでなく、共にサステナビリティの実現を目指すパートナーも見つける場として活用してみてはいかがだろうか。

[イベント協力についてのお問い合わせはこちら

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【関連サイト】 ニッコー株式会社公式サイト

table source 編集部
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