まだ食べられるのに廃棄されてしまう、食品ロス。環境省によると、日本では2019年に570万トンの食品ロスが発生。家庭からは261万トン、事業者からは309万トンが発生した。中でも外食産業から発生するのは103万トンにものぼり、その原因の8割以上が、店舗で来店客が食べ切れなかった食品の廃棄によるものだという。
こうした食べ残しによる食品ロスと事業ゴミの削減を目指し、日本ホテル株式会社は、2022年4月1日より「mottECO(モッテコ)」を開始した。対象となるホテル内のレストランや宴会場で、料理を食べ切れなかった来店客が希望した場合に、環境に配慮した認証紙製を使用した容器を配布する取り組みだ。
「mottECO」が実施されるのは、東京ステーションホテル、メズム東京オートグラフコレクション、メトロポリタンホテルズ(池袋、エドモント(飯田橋)、丸の内、川崎、さいたま新都心、高崎、長野)の合計9店舗。各ホテルの直営レストランではブッフェ料理以外のコースやアラカルト料理が、宴会場ではブッフェとコース料理が対象となる。
アメリカのレストランでは料理を食べ切れなかった場合に、店員に持ち帰り用の箱や容器が必要か聞かれることが一般的だ。1940年代にアメリカ政府が飲食店での食べ残しの持ち帰りを推奨したことから、食べ残しを自宅に持ち帰る容器や行為自体が「ドギーバッグ」と呼ばれるようになったという。
日本でも飲食店等での食べ残しの持ち帰りをより身近な文化にしようと、環境省は2020年に「NEWドギーバッグアイデアコンテスト」を開催。そのネーミング部で大賞に輝いたのが 「mottECO」で、「もっとエコ」や「持って帰ろう」のメッセージが込められている。
一方で、持ち帰りを推進することで懸念されるのが、衛生や食中毒等の心配だ。十分に加熱された料理を選ぶ、清潔な容器を使用する、自宅で食べる前には再加熱してから食べる、料理を暖かい場所には置かないなど、安全に持ち帰り料理を楽しめるよう、各自が責任を持って管理するよう啓発していく必要もある。
食品ロスは、貧困や地球環境にも悪影響を与える世界的な課題だ。農林水産省によると、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」に基づき、世界各国が食品ロス削減に向けて具体的な目標を掲げ、積極的な取り組みを始めている。今後、「mottECO」のような取り組みが普及することで、日本でも持ち帰りの文化が浸透することを期待したい。
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【参照サイト】 農林水産省:食品ロスの現状を知る