ネスレカカオ収穫新技術

チョコレートの製造に欠かせないカカオだが、近年、気候変動が生育環境に悪影響を及ぼしている。その結果、世界のカカオ在庫はこの10年間で最低水準に落ち込み、2024年にはカカオの価格が史上最高値に達した。また、科学者の見解によると2050年までに3分の1のカカオが枯死する可能性もあるといい、世界中でチョコレート不足に陥る未来は十分に起こり得るといえるだろう。

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一方で、カカオ産業が二酸化炭素排出量の増加や水資源の大量消費、森林破壊を引き起こし、環境問題を深刻化させているのも事実だ。カカオ、ひいてはチョコレートが直面する危機を解決するには、持続可能な生産体制を構築して供給量を確保し、環境保全と価格の安定を両立させることが重要ではないか。

そうしたなか、大手食品会社の「Nestlé(ネスレ)」は、チョコレート製造にカカオの実を最大30%多く使用できる新しい特許取得技術を開発したことを、2025年8月30日に発表した。

ネスレカカオ収穫新技術

実は、チョコレートの原料として収穫されるカカオ豆は、カカオの実全体の30%ほどに過ぎない。残りの約70%にあたるカカオの果肉や殻などは、製造過程においてほとんど廃棄されてしまっている。

そこでNestléの研究開発チームは、カカオの実で未活用となっている部位に着目。実の内部にある全ての成分を採取し、自然発酵させることでチョコレートの鍵となる風味を引き出す方法を編み出した。さらにこの部分を粉砕、焙煎、乾燥させ、チョコレートフレーク状に加工すれば、風味を損なわずにチョコレートの製造に利用できるという。

こうしたNestlé独自のアプローチは食品廃棄物を最小限に抑えるだけでなく、農家が出荷できるカカオ原料の量を増やすことも可能となる。また、カカオの抽出を効率化して節約した時間は、剪定をはじめ必要な農作業に充てられるようになるため、収穫量の向上も見込める。

ネスレカカオ収穫新技術

Nestléでは、サステナビリティ方針に基づき、環境への影響を継続的に削減するとともに、サービス対象地域への支援や食料システムの強化に取り組んできた。なかでも、2030年までに主要原材料の100%を責任ある方法で調達することを目指しており、今回の技術革新はその目標達成に向けた確かな一歩といえる。
同社によると、このプロジェクトはまだ試験段階にあるものの、今後はより大規模に適用する方法を検討しているという。

食品メーカーがサステナブルな手段で原材料を調達するようになれば、環境だけでなく生産者の生活を守ることにもつながる。Nestléの今後の取り組みの進展に注目したい。

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【参照サイト】Sustainability: Creating Shared Value | Nestlé Global
【参照サイト】Revolutionizing cocoa production: Nestlé develops novel technique to get more yield from cocoa fruit

table source 編集部
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