食べられる食品を廃棄するフードロス。その対策の浸透に比例するように、国民の意識も高まっている。消費者庁が行った消費生活に関する意識調査では、すでに2016年で約83%の人がフードロスに対して「もったいない」と感じていることがわかっている。特に食生活の中でもったいないを意識した経験に対して「期限切れ等で食べずに捨ててしまうとき」と回答した人が54.6%と最も高く、次いで「レストランなどで他人の食べ残したものを見たとき」と回答した人が46.4%だった。

そうしたなか、廃棄する予定のホワイトボタンマッシュルームから天然防腐剤を開発したメーカー「Chinova Bioworks」が、600万ドルの資金調達を2022年6月22日に発表した。
Chinova Bioworksは「クリーンラベルの食材を提供し、食品廃棄物を減らす」というシンプルな目標から始まった会社だ。ホワイトボタンマッシュルームから抽出した天然繊維で食品廃棄物の削減を可能にする、天然素材「Chiber™」を作り出し、注目されている。

クリーンラベル(Clean Label)とは「出どころが明確で体に良いとされる原材料を使う」という、欧米を中心に広まった食の嗜好・トレンドのことを指す。しかしながら明確な定義があるわけではない。何を「クリーン」と捉えるかは個人次第と言えるが、多くの場合、消費者に分かりやすいシンプルな原材料配合であることが望まれる。そして、化学合成された食品添加物や遺伝子組み換え原料を使わないことも含まれている。

天然防腐剤であるChiber™の原料は、農家から回収した廃棄予定のホワイトボタンマッシュルームの柄(え)。Chinova Bioworksの独自の技術により、マッシュルームを乾燥させ、粉砕し、熱と水を使って柄から食物繊維キトサンを抽出。環境のため、加工も最小限で済むよう配慮されている。同社によるとChiber™は、クリーンラベル素材でありながら、合成防腐剤と同等の防腐効果があるという。さらに、Chiber™を天然防腐剤としての役割以外にも、ビール製造の際に濁りを除去するために使用されるイジングラスや合成清澄剤の代替品として、この天然繊維を使用することも検討しているという。

食品や飲料製品に含まれる酵母、カビ、菌類の増殖を抑制することは、より大きな可能性を秘めており、Future Market Insightsの行った調査によると、天然保存料の市場規模は2022年時点で推定4億3520万ドルに達する。2032年までに、ほぼ倍増するとも予想されている。

フードロス対策として食材を余すところなく使い、新たな製品を生み出す取り組みは世界でもますます拡大していくことは間違いなさそうだ。飲食店における食品ロス削減のひとつのアイデアとして、Chiber™のような天然防腐剤の可能性にも注目したい。

【関連記事】

ホタテの貝殻を再利用して作られた天然成分100%の洗浄剤、販売を開始

【参考サイト】 Chinova Bioworks raises $6M for clean-label preservative
【参考サイト】 Chinova Bioworks
【参考サイト】 Natural Food Preservatives Market – Overview
【参考サイト】 消費者庁:平成 28 年度 消費生活に関する意識調査 結果報告書

table source 編集部
table source 編集部
table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
Share
This