イギリスのスーパーマーケット大手モリソンズは、2030年までにネットゼロとして認定された農場のみから調達することを決定した。2021年3月現在、モリソンズは国内3,000の農家や生産者から肉や農産物などを調達しており、売上高はテスコ、セインズベリー、アスダに次ぎ国内4番目を誇る。
ネットゼロ農場からの調達を達成するため、農家はカーボンクレジットのオフセットは最終手段とし、再生可能エネルギーへの切り替え、水・肥料の使用量の削減、また炭素を土中から出さない土壌開発のための環境再生型農業の実践が求められる。ほかにもメタンの生成量が少ない動物種への切り替えや、長期的にはカーボンフットプリントを短縮するために契約者を切り替える可能性も示唆している。
さらに同社は、全国農民連合(NFU)およびナチュラルイングランドと連携して助言を受けており、また、ハーパーアダムス農業大学に持続可能な農業の学校を設立し、農家に必要なトレーニングも提供する。
一方で、これはモリソンズが海外からの調達を停止するという決定ではないということも明記する必要がある。例えばパイナップルやバナナなどのトロピカルフルーツ、紅茶、米、チョコレートなどの製品は、国内で生産することは難しい。この目標は国内で調達するモリソンズの自社ブランド商品を包括しているものの、自社ブランド以外の商品についてはまだ明らかになっていないという。
イギリスの農業や土地利用は、2017年時点で二酸化炭素排出量の10%を占めている。NFUは国内の農家に2040年のネットゼロ目標に向けて取り組むよう要請しており、その他テスコをはじめとした多くのスーパーマーケットは2035年のネットゼロに向けて取り組んでいるが、モリソンズのこの決定は、その先駆けとなるものだ。
「気候変動は我々にとって最大の課題の1つであり、食料の栽培は温室効果ガス排出の主要な要因です。」とモリソンズの最高経営責任者であるデビッド・ポッツは話す。
「私たちは国内農業のあり方を大きく変えられる立場にあります。業界の期待を大きく上回る野心的な目標ですが、それを実行するのは私たちの義務です。」
ネットゼロにできない農場を排除するのではなく、小売の立場から必要なトレーニングも提供することでサステナビリティを支援しているのがユニークな点だ。現在はイギリス国内のネットゼロ農場からの調達を目指すという決定だが、海外への働きかけも間もなく始まるだろう。農業のサステナブル化に向けたグローバルな英知の結集が求められる。
【参照リリース】Morrisons leads green farming revolution with pledge to have first net zero British farms by 2030