近年、生息地の環境悪化やキャビアに加工するための卵の乱獲などによりチョウザメの個体数が急激に減少し、27種のチョウザメはすべて国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに掲載されている。また、チョウザメは産卵期間に4半世紀を必要とする種類もあり、養殖が追いつかず近年キャビアの需要が供給をはるかに上回っている。

そうした中、ヴァーヘニンゲン大学・研究機関(WUR)とオランダのGeneus Biotech社は、細胞培養を使ったキャビアを開発するため新たな研究提携を結んだ。

今回の研究では、「Magiccaviar(マジックキャビア)」と名付けられた、体外で培養した卵子を原料とした細胞培養魚卵製品を開発している。細胞は、ベルーガ・チョウザメと、ベルーガ・チョウザメに近縁だが絶滅の危機に瀕していない小型のチョウザメであるスターレット・チョウザメから採取される。

Geneus社によればMagiccaviarは、キャビア製造のための細胞培養に関する世界初の特許を出願中であるという。この技術は、絶滅危惧種の保護としての価値があるだけでなく、高級食材としてのベルーガ・チョウザメの成熟卵子を体外で培養することによって、動物を介さずに生産するバイオエンジニアリングの取り組みとしても期待されている。

レストランでも家でも、食卓に贅沢さをプラスしてくれるキャビア。高級食材の一つであるキャビアがこのままでは食べられなくなってしまう。絶滅危惧種の生息環境を守ることや乱獲を取り締まることも重要だが、科学分野から新たな商品が開発されることにも期待したい。

【参考サイト】Geneus Biotech
【参考サイト】Dutch Scientists Are Making Cell-Based Caviar A Reality
【参考サイト】Wageningen University & Research (WUR)

table source 編集部
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