近年、健康志向や、食糧危機、環境問題などへの意識の高まりから、動物肉の代わりに植物由来の大豆ミートなどを使う代替タンパク質の需要が増大している。矢野経済研究所は2025年には代替肉の世界市場規模がメーカー出荷金額ベースで、約6,700億円に、2030年には約1兆9,000億円に上ると予測している。

国内でも2015年頃より代替肉市場への企業参入が目立つようになり、2019年以降には伊藤ハムや日本ハムなど食肉や食肉加工食品を主力としている企業も参入しするようになった。こうした国内の代替肉市場の広がりを牽引して来たのは大豆だが、新たに食品業界で注目を集めているのが「ルパン豆」だ。

ルパン豆は大豆よりも食物繊維が豊富で100gに対して1日に必要な量の3割も摂取できるという。9種類のアミノ酸をすべて含み、ビタミンやマグネシウムなどのミネラルも豊富だが炭水化物は非常に少ない。また、古代ローマ人も好んで食べていたというルパン豆は、輪作ができるためサステナブルな作物といえる。

動物性タンパク質の代替えとして

世界ではルパン豆を動物性タンパク質の代替食品として活用する動きが出てきている。オーストラリアのEighth Day Foodsが開発したヴィーガンミート、Lupremeは魚や鶏肉のように軽い食感があり、豚肉や牛肉の風味が感じられるほど味わい豊かだという。薄くスライスしたりソーセージやミンチ状にしたりと成形も自在にできる。そのほか、サンフランシスコのLupini Milkはルパン豆を使って100%植物性のミルクを作っていたり、カナダのNabati Foodsがルパン豆をベースにしたヴィーガン・グルテンフリー・大豆フリーの液体卵の代替品を発表したりと活用方法はさまざまだ。

食材としての価値

代替肉としてだけでなく、ルパン豆を利用して、機能性や栄養価の高い新しい食材を開発する動きが出てきている。西オーストラリア州のWide Open Agricultureは同州で広く栽培されているルパン豆から高品質のタンパク質を抽出し、パンやパスタなどのさまざまな食品の原料として利用する方法を研究している。また、マレーシアのCK Ingredientsは、でんぷんの代わりにルパン豆を使用することによりタンパク質含有量を高めた食材「LuPro Lupin」を開発した。これはスナックやスムージーなどの材料となりベストセラーとなっている。

サステイナブルでヘルシーなスナックにも

さらに、ルパン豆をそのまま使ったスナックも登場している。その先駆けとなったのが、3年前に発売されたBramiだ。高いタンパク質と繊維質を含んでいることに加え、ガーリック・ローズマリーやチリ・ライムなどのさまざまなフレーバーを展開したことで、健康志向の強い消費者の心をとらえた。


日本では代替タンパク質というとすぐに大豆が思いつくだろう。まだあまり馴染みのないルパン豆だが、栄養価が高くヘルシーな食材として日本でも活用されることに期待したい。

【参照サイト】代替肉に関する調査結果|農林水産省
【参照サイト】What Are Lupin Beans? Meet The Superfood Transforming Vegan Food, From Milk to Meat
【参照サイト】ルピン;そのユニークな栄養と健康促進的性質-1

table source 編集部
table source 編集部
table source 編集部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環経済)に取り組みたいレストランやホテル、食にまつわるお仕事をされている皆さまに向けて、国内外の最新ニュース、コラム、インタビュー取材記事などを発信しています。
Share
This