近年、日本では猪や鹿、カラスなどの野生鳥獣による「獣害」の問題が加速しつつあることをご存知だろうか。なかでも、2021年の鹿による農作物被害金額は53億にものぼり、猪などの野生鳥獣を上回り最も多い結果だった。また、林野庁によると2020年の野生鳥獣による森林被害面積は全国で約6千ヘクタールであり、このうち鹿による被害が全体の約7割を占めているという。鹿は農作物を食べてしまうだけでなく、枝葉の食害や剥皮により農地や森林にも被害を及ぼすため、環境負荷の要因ともなっている。

野生鳥獣による森林被害|林野省より

そうしたなか、ロジスティクスイノベーションプラットフォーム株式会社(以降、ロジップ)は、国内のジビエ肉の活用を推進するプロジェクトを開始した。第一弾として、大阪の老舗洋食店「新世界グリル 梵」とコラボレーションした「湘南じびえ×新世界グリル 梵の鹿カツサンド」を2022年1月11日より「新世界グリル 梵 銀座店」にて発売した。

ロジップは最新ロジスティックス技術の活用により社会課題解決を推進する会社だ。近年の食品ロス問題や日本の食料自給率の低迷、フードシステムを起因とする気候変動などの一連の課題を、コールドチェーン(低温物流)をはじめとする最新のロジスティックス技術で解決したいという思いで設立された。

今回の鹿肉の活用は、最新ロジスティックス技術と一流シェフの腕を掛け合わせたフードアップサイクルプロジェクト「サステナフード」の一環だ。国産ジビエ認証の取得やクラウドファンディングなど、精力的にジビエ肉の活用を広めているジビエ処理加工会社「湘南じびえ」と協業し、プロジェクトを開始した。「湘南じびえ」のジビエ肉の加工技術とロジップが持つ最新のコールドチェーン技術で、従来よりも美味しい状態で冷凍保存したジビエ肉の流通を実現した。また、このプロジェクトで提供するジビエ肉には個体認証システムを導入しており、素材自体の安心と安全も追求しているという。商品開発にあたっては、ヘレカツサンドで有名な老舗「新世界グリル 梵」とコラボレーションし、1963年創業の伝統の味を鹿肉使用のカツサンドでも再現した。

近年、鹿の生息数の増加や生息域の拡大により、被害が全国的に大きな問題となっており、食用としての利活用が増加することが見込まれている。また、鹿肉は他の食肉と比べ脂肪が少なく低カロリーでありながら、高たんぱく、鉄分豊富でヘルシーな食材としても関心も高まっている。一方で、野生鳥獣は家畜とは異なり、飼料や健康状態等の衛生管理がなされていないため調理には細心の注意を払わなければならない。飲食業界がジビエ肉に対する知見を深めることが、野生鳥獣による環境負荷を軽減する一歩につながるのではないだろうか。

【参照サイト】最新ロジスティックス技術を活用した食品流通事業「サステナフード」、「湘南じびえ」との協業により、国内のジビエ肉を活用推進するプロジェクト第一弾『湘南じびえ×新世界グリル 梵の鹿カツサンド』を発売
【参照サイト】野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)についてhttps://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-
【参照サイト】一般社団法人日本ジビエ振興協会

table source 編集部
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