「ベターミート」という言葉を目にしたことがあるだろうか。ベターミート(より良い肉)とはサステナブルな付加価値を持つ食肉のこと。近年はジビエや経産牛などを中心に、さまざまなベターミートへの注目が集まっている。
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美味しさだけでなく、サステナブルであることが食肉の新たな価値として注目されるなか、2019年11月29日(いい肉の日)、熊本県が立会人となり、熊本県畜産農業協同組合連合会と慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の岸博幸研究室、株式会社肥後銀行による産学官金の連携協定「くまもとあか牛プロジェクト」が締結された。
「あか牛」とは、日本の固有種とされる4種和牛のうちのひとつ。国内では0.36%しか流通しておらず、その7割近くが熊本県で生産されている。あか牛は赤身を特徴とする希少な品種でありながら、近年の脂肪交雑、いわゆるサシを重視した和牛の格付けにおいては、市場評価が低下。黒毛和牛への生産シフトが進んだ結果、あか牛の生産数はこの20年間で半減しているという。
そこで、「くまもとあか牛プロジェクト」では、阿蘇の豊かな大地と水で育ったあか牛の生産を技術と資金の両面から支援。現行格付け制度とは異なる評価軸での生販体制を構築し、エシカル消費のニーズに応じた持続可能な畜産業と肉食文化の維持を目指している。
こうした背景から、同プロジェクトで出荷・販売を推進しているのが「エシカル和牛・くまもとあか牛」だ。
このくまもとあか牛は、「出光興産株式会社」が開発した「ルミナップ」という飼料で肥育されている。そもそも、牛のげっぷには温室効果ガスのひとつであるメタンガスが多く含まれており、地球温暖化の要因として問題視されてきた。ルミナップには、げっぷの発生源となる牛の第一胃に働きかけ、メタンガス発生を約36%抑制する効果が見込まれるカシューナッツ殻液が混合されている。これにより、メタンガスの排出量を減らすだけでなく、牛の健康を維持して生産性向上にも貢献している。
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また、あか牛全頭の生産情報ならびに1頭ごとの肉の流通量を可視化することで、供給体制のトレーサビリティを実現。さらに、持続可能な畜産業に向けて、生産者と消費者をつなぐ「Farm to Table」のモデル確立にも取り組んでいる。
そして今回、「ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ」内にあるレストラン「鉄板焼 匠」にて、このエシカル和牛・くまもとあか牛を使用した料理を使った和牛フェアが開催される。期間は2024年9月1日から11月30日まで。
料理長の馬原氏が、産地に赴いてセレクトした熊本の素材を独自にアレンジ。あか牛をはじめ、熊本県産のエシカルな食材を盛り込んだランチとディナーコースを提供する。
- ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ
- 店名:鉄板焼 匠 / 1F
- 期間:2024年9月1日〜11月30日
- 料金:ランチコース23,100円/ディナーコース37,950円
- 税込み、サービス料別
詳細・オンライン予約は公式サイトより
健康上の理由や環境への配慮、アニマルウェルフェアの観点から、肉を食べないヴィーガンやベジタリアンなどの選択肢が増える一方で、肉を使ったメニューへのニーズも依然として多いのが現状だ。
単純に肉の提供をやめるのではなく、「ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ」の取り組みのように、ベターミートや代替食品などのエシカル食材を活用することで、メニューの幅が広がり、幅広いニーズにも応えることができそうだ。ストーリー性のある食材をきっかけに、お客さまとの新たなコミュニケーションにつながることもあるかもしれない。
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