和紙の原料「楮/こうぞ」の一部がスーパーフードに。和紙の産地で試食会を開催

近年、地方自治体や企業が主体となって、地方創生に取り組んでいる。地方創生は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」に関連する重要な要素のひとつだ。サステナブルな地域社会の実現には、住民が暮らしやすい「まちづくり」はもちろん、経済活動の促進による「まちおこし」も欠かせない。

とりわけ観光業や地域のブランディングにおいて、その地域独自の食文化は魅力的なコンテンツのひとつだ。「ここでしか食べられない」という希少価値を全面に打ち出した名物があれば、新たに観光客を呼び込めるだろう。

こうぞ スーパーフード

そうした希少価値の高い名物をまちおこしに活かす事例として、埼玉県比企郡小川町の観光まちづくり事業を行う「株式会社おいでなせえ」の活動に注目したい。

埼玉県小川町は、日本でも有数の和紙の生産地として知られている。和紙の原料に使用されるのは、楮(こうぞ)という植物の「皮」のみ。小川町の和紙生産では、夏場に楮の新芽を摘んで間引きする芽掻き作業を行い、皮の生産量を増やしている。従来、この作業の過程で発生する楮の「芽」がそのまま廃棄されてきた。

そこで同社は、和紙作りで不要とされる楮の芽を活用しようと試み、栄養調査を実施。その結果、健康な体づくりや美肌効果に期待できる栄養素を豊富に含んでいることが判明した。カルシウムは牛乳の約2.5倍、ポリフェノールは赤ワインの約1.6倍、タンパク質は豆乳の約1.5倍にも及ぶという。

こうぞ スーパーフード

栄養価の高い楮の芽を食べる文化が根付けば、減少傾向にある楮の生産を支援できる。同時に、和紙に「食」という付加価値を与えることで、新商品の開発や観光の推進にも活かせるだろう。

今回、こうした楮の芽が持つ可能性を伝えるために、株式会社おいでなせえではプロのシェフによる楮の芽を使った創作料理の試食イベントを、2023年11月23日に開催した。試食イベントでは、その地ならではの食材や生産者への敬意、案件ごとのストーリーを踏まえて料理を作る「旅するシェフ」こと吉田友則氏が、楮の芽を使った創作料理を提供。

また、観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」を活用し、本格的な再開が見込まれるインバウンド向けに地方への誘客や観光消費の拡大を目指している。

こうぞ スーパーフード

新型コロナウイルスの感染拡大による農家への影響は大きく、農林水産省が実施した2021年1月の調査では、6割強の農業者が「売上高にマイナスの影響がある」と回答した。農業をはじめとした生産業の売上を回復させるには、生産物を観光資源としてPRするのもひとつの手段だ。また、小川町のように廃棄されてきた楮の芽を食材として利用すれば、和紙産業全体の持続可能な発展にも貢献できる。

こうした地域ならではの食材を発見し、飲食店のメニューとして取り入れていくことで、SDGsの「住み続けられるまちづくりを」という目標の達成を後押しすることにつながりそうだ。

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【参照サイト】 【食体験】和紙のふるさとでスーパーフード・楮(こうぞ)の可能性を食す! | おいでなせえ小川町
【参照サイト】 「和紙のふるさと」で、スーパーフードを食す!和紙の原料・楮を使った創作料理の試食イベントを開催
【参照サイト】 農林水産省:新型コロナウイルス感染症による影響と対応

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