近年、プラスチックごみによる海洋汚染が世界的な課題として注目され、2022年4月にプラスチック資源循環促進法が施行されるなど、国内でも対策が広がっている。
2018年10月公表の農林水産省の調査によると、国内では年間約900万トンのプラスチックが排出され、このうち食品容器などに使う「包装・容器等/コンテナ類」は約400万トンを占めるという。河川などから海に流れ込んだプラスチックごみは長期間残り続けるため、地球規模での海洋汚染や生態系への影響が懸念されており、対策は喫緊の課題となっている。

そうしたなか、食用油を主に扱う大手食品メーカー、株式会社J-オイルミルズは、2030年度までにプラスチックの廃棄量をゼロにする目標を策定したことを2022年5月30日に発表した。

「廃棄量ゼロ」とは、リサイクルされずに廃棄されるプラスチックごみを出さないことを指す。プラスチックの使用量を必要最小限に抑え、再生技術の導入・拡大や、企業間連携による再生技術開発の取り組みにより、目標の着実な達成を目指すという。

これまでJ-オイルミルズは、主に容器・包装の軽量化を通じて、脱プラスチックに向けた取り組みを進めてきた。家庭用の代表的な製品JOYL「AJINOMOTO さらさら®キャノーラ油」などに使用されている「1000gエコボトル」では容器を2002年比で26%軽量化するなど、各容器のプラスチック使用量を段階的に削減してきた。
2018年には「容器包装に関する指針」を定め、次世代型の素材や容器の開発を通じて地球環境により配慮した企業活動を推進することを掲げている。

同社は、2030年度までにプラスチック廃棄ゼロを実現するための重点施策として、環境配慮型商品「スマートグリーンパック(SGP)」シリーズの拡充を挙げている。同シリーズは紙パックを用いており、従来の同容量帯容器と比較してプラスチック使用量が60%以上少なく、CO2排出量を26%以上削減すると推計されるそうだ。

同シリーズで使用している紙パック容器素材は酸素バリア性と遮光性に優れている。それによりキャノーラ油とごま油、こめ油は、従来のプラスチック容器と比べて賞味期間が倍の2年になったという。ボトル用ラベルに使用するインキに関しても、原料の一部に植物由来の素材を使用したバイオマスインキの採用を順次進めていくという。

2021年8月にキャノーラ油とごま油の2油種を先行発売し、2022年3月にはエクストラバージンオリーブオイル、こめ油、大豆油の3油種を追加。今後は既存の油脂製品をSGPに順次切り替えていくことも視野に入れているという。

油脂商品ではまだ珍しいとも言える、紙パック製品。環境に優しいだけでなく、プラスチック容器に比べて容器の処分が楽であることなど、作業の効率化にも繋がりそうだ。

今回のJ-オイルミルズの発表のように、近年、国内でも数々の大手企業がサステナビリティへの積極的な取り組みを進めている。こうした話題が増えることで、世間にも今後ますますサステナビリティへの関心が広まっていくだろう。環境に配慮したお店づくりに取り組むことは、お客さまの共感を得ることにも繋がりそうだ。

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プラ循環法に対応、飲食店のためのプラスチック削減策8つ

【参照サイト】2030年度「プラスチック廃棄ゼロ」目標策定
【参照サイト】農林水産省「食品産業におけるプラスチック資源循環をめぐる事情」

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