近年、ジビエへの関心が高まるにつれて、メニューに取り入れる飲食店も増えている。「ジビエ(gibier)」とはフランス語で、狩猟で得た野生鳥獣の肉を指す言葉だ。ジビエには豚や牛、鶏肉とは異なる独特の味わいがあり、栄養価も高いとされる。
一方で、日本では野生鳥獣による被害が深刻化しており、農林水産省の報告によると2021年度の農作物への被害額は155億円にのぼった。獣害は地域農業を衰退させるだけでなく、土壌流失や希少植物の減少といった環境破壊を引き起こす要因となる。
こうした被害の拡大を防ぐためには、有害鳥獣の捕獲が必要不可欠だ。命ある生き物を捕獲後にただ廃棄するのではなく、ジビエとして有効活用することで、農山村地域の所得向上や廃棄物の削減、食糧確保、アニマルウェルフェアの向上などサステナブルな効果も見込めるだろう。
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農林水産省をはじめ行政レベルでジビエの利用が推奨されるなか、「東急ホテルズ&リゾーツ株式会社」が経営する「伊豆今井浜東急ホテル」では、伊豆産ジビエのメニュー開発に取り組んでいる。
2023年11月6日より、ホテル内のレストラン「Melesea(メレシー)」とティーラウンジ「フローラ」にて、伊豆産鹿肉を100%使用した「伊豆産ジビエ 鹿肉メンチカツバーガー、わさびマヨネーズソース」の提供を開始した。
同ホテルのプレスリリースによると、鹿肉は、牛肉と比べて高たんぱく質・低脂質でヘルシー。さらに、鹿肉からは牛肉の2倍もの鉄分や、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)も摂取できる。新鮮な状態のまま低温貯蔵庫で数日間熟成し、旨味成分を染みこませた鹿肉には、ジビエ特有の臭みをほとんど感じないという。この鹿肉をメンチカツにし、肉本来の味を閉じ込めて柔らかく仕上げた。さらに、生姜醤油ベースの甘辛タレやわさびがきいたマヨネーズソースで味付けすることで、ジビエが苦手な人にも食べられるように工夫している。
すでにホテルでは、伊豆産の鹿スネ肉をブイヨンで煮込んだ「伊豆産鹿カレー」を提供中。低温で調理した鹿肉はスプーンで簡単に崩れるほど柔らかく、子どもでも食べられるよう仕上げている。
鹿や猪など野生動物が数多く生息している伊豆半島では、獣害の影響も大きい。伊豆今井浜東急ホテルは「増えすぎた野生動物を食材として活かし、伊豆の農林業や農村を守りたい」としている。
野生動物を害獣ではなく「自然の恵み」と捉えることで、伊豆今井浜東急ホテルのように、地産地消の名物メニューとして活用することが可能だ。今後、こうした飲食店のジビエメニューが、地域活性化の新たな役割を担っていくのではないだろうか。
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