イケア・ジャパン、AI導入で食品ロスを可視化。食品ロス50%削減の目標を前倒しで達成

農林水産省は2019年「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)の」基本方針において、「食品関連事業者から発生する事業系食品ロスを2000年度比で2030年度までに半減させる」ことを目標に掲げた。

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」を構成するターゲットの中にも、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」とあり、飲食業界では食品ロスに対する早急な対策が求められている。

そうしたなか、2022年9月21日、スウェーデン発祥のホームファニッシングカンパニー「イケア」の日本法人「イケア・ジャパン株式会社」は、2022年7月時点で食品廃棄物発生量を62%削減し、173,409食分相当(1食400g換算)を節約したと発表。同時に、CO2排出量298トン相当の削減も達成した。

イケア・ジャパンの親会社である「Ingkaグループ」は、“イケア店舗全体で2022年末までに食品廃棄物発生量を50%削減する”という目標を一年前倒しで達成しており、イケア・ジャパンもその成果に貢献している。

国内12店舗で年間1,200万人以上に料理を提供しているイケア・ジャパンは、従業員の意識とテクノロジーを結び付けることで、食品ロス削減における目標達成を前倒しで実現できたとしている。

成果に直結した主な要因は、2018年6月から開始したIngkaグループと「Winnow Solutions社」のパートナーシップによるAIの活用と、包括的な従業員のトレーニングプログラムの実施だ。AIツール「Winnow Vision」を導入し、廃棄物とその理由データを収集、記録することで従業員の意識に働きかけ改善につながったとしている。

イケア・ジャパンは、各店舗キッチンエリアのAIツール導入の他にも、IKEA新宿のスウェーデンバイツにてイケアミートボールなどデリ商品を量り売りするなど、積極的に食品ロス削減への取り組みを実践してきた。

またIngkaグループとInter IKEAは、他にも食品ロス削減対策として余剰食品を割引価格で購入できる食品ロス削減アプリ「Too Good to Go」と契約している。オランダのIKEA Haarlemでは避けようのない食品廃棄物をバイオガスに変換する、店舗設置型の嫌気性消化装置をテスト中だという。このバイオガスは電気と熱に変換されるため、店舗に戻して循環型ループを作ることを目標としている。

IKEAの発表にある「173,409食分相当の食品ロス削減」という数字は世界中に大きなインパクトを与えるものだ。同時に、世界中の食品ロスが非常に大きな規模起きているということにも気付かされる。今回の取り組みでは、食品廃棄物を記録し現状を把握したことで、そこで働く従業員の意識に変化がもたらされたことが大きな成功要因だ。AIツールの導入が容易ではなくても、現状を可視化し、試行錯誤しながらも実践することで、その効果は確実に現れるのではないだろうか。

【参照サイト】イケア・ジャパン、食品廃棄物50%削減の目標を早期に達成 2022年7月時点で削減率62%、173,409食分相当の節約
【参照サイト】食品ロス量(平成30年度推計値)の公表
【参照サイト】UN: 17% of all food available at consumer levels is wasted

table source 編集部
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