コロナ禍で従来の経済や社会が大きく転換することを余儀なくされている。単に状況を「もとどおり」にするのではなく、環境負荷の低いサステナブルな計画を立てようとする「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)」を求める動きもある。
コロナ禍で観光業も大きな打撃を受ける中、ホテル大手ヒルトングループは「Travel with Purpose(パーパスを持った旅を)」という企業責任戦略を掲げ、環境に配慮した新しい旅のスタイルを提案する。アジア太平洋地域におけるヒルトンの取り組みを紹介したい。
モルディブのコンラッド・モルディブ・ランガリ・アイランドでは、家族で学べるサンゴの保護プログラムを提供する。海洋生物学者の協力のもと、宿泊客はシュノーケルで行ける範囲のサンゴの幼生場やサンゴ礁に行き、シュノーケリングをしながらサンゴを含む海の生物がたくましく生きる様子を見ることができる。そして宿泊客が自ら、保護に適した大きさにサンゴを断片化し、断片化されたサンゴの「赤ちゃん」は、幼生場でリハビリを受ける。プログラム体験後にも体験した宿泊客の海洋保全に対する意識を継続させるため、サンゴが十分に成長し自然の生息地に移植されるまでの約1~2年間、ホテルからサンゴの成長についての最新情報が送られる。
他にも、インドネシアのヒルトン・バリ・リゾートは、地元の業者や生産者と協力して、地元の食材を使った料理をホテルで提供する「Know Thy Neighbor(近隣を知ろう)」プロジェクトを始動した。宿泊客は、バリ島産のオーガニック・ソルトを持ち帰ったり、地元農家のハチミツ入り紅茶を飲んだりできるほか、地元で捕れたシーフードをホテルのレストランで楽しむことができる。また、同プロジェクトの一環として、レストランのシェフや地元のデザイナー、職人が一緒にデザインした食器を使った料理が提供される。
オーストラリア、ニュージーランドにあるヒルトングループのホテルでは、ホテルから出るごみの削減に力を注ぐ。NPO法人ソープ・エイド(Soap Aid)と共に、従来埋め立て処分を行っていた石鹸のリサイクル活動を実施している。2015年に同プログラムを開始して以来、廃棄予定だった石鹸を約2.4トン削減した。さらに使用済のアメニティの容器は全てビヨンド・スキン・ディープ社(Beyond Skin Deep)と協力し、再生利用。2019年に同プロジェクトを開始してから850キロの廃棄プラスチックを回収し、耐久性のある柵に生まれ変わらせ、それらは、ニュージーランドの農家で使われている。
コンラッド・ソウルやヒルトン東京ベイでは、2021年に海洋管理協議会(Marine Stewardship Council、以下MSC)および水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council、以下ASC)のChain of Custody認証(加工・流通過程の管理の認証)を取得した。韓国では国内初の認証を取得したホテル、日本ではヒルトングループで国内初の認証ホテルとなる。ホテルで食事をする際、MSCまたはASCのエコラベルが付いたメニューを選ぶだけで、持続可能な漁業や養殖場を支援できるようになる。なお、ヒルトン・シンガポールは、2015年にアジアで初めて同認証を取得しただけでなく、垂直農園で野菜やハーブを育て、地産地消の促進や使用後の水を再利用するなど、よりサステナブルなあり方を模索している。
環境負荷を軽減しつつも旅を楽しめるという新たなスタイルを提案するヒルトン。以前のように気軽に旅行が楽しめるようになれば、ぜひ行ってみたい。
【参照サイト】ヒルトン、環境に配慮した新しい旅の思い出づくりを提案
【参照サイト】Build Back Better(ビルド・バック・ベター)とは・意味
【関連サイト】ヒルトングループ
【関連サイト】コンラッド・モルディブ・ランガリ・アイランド
【関連サイト】ヒルトン・バリ・リゾート
【関連サイト】NPO法人ソープ・エイド(Soap Aid)
【関連サイト】ビヨンド・スキン・ディープ社(Beyond Skin Deep)
【関連サイト】コンラッド・ソウル
【関連サイト】ヒルトン東京ベイ
【関連サイト】ヒルトン・シンガポール