酒造メーカー白鶴の循環型ものづくり。アルコール発酵で発生するCO2を植物栽培に活用

白鶴酒造 植物栽培

大量生産・大量消費型の「リニアエコノミー(直線経済)」は大量廃棄を誘発し、気候変動や天然資源の枯渇、生物多様性の破壊など様々な環境問題を深刻化させる社会的要因のひとつだ。現在、世界では従来のリニアエコノミーから「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」へと移行する動きが拡大している。

サーキュラーエコノミーとは、資源を有効活用し、廃棄物を最小限に抑えて循環させる経済モデルのこと。廃棄物に資源としての付加価値を生み出すシステムは、環境負荷を軽減するだけでなく、コスト削減や新しいビジネスの創出など企業にとって経済的なメリットをもたらし得る。サーキュラーエコノミーを促進することで、環境と経済の両分野から持続可能な社会の実現にアプローチできるだろう。

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白鶴酒造 植物栽培

そうしたなか、兵庫県神戸市の老舗日本酒メーカー「白鶴酒造株式会社」はアグリテック系のスタートアップ「スパイスキューブ株式会社」と共創。日本酒造りをよりサステナブルに進化させるべく、「発酵由来CO₂の利活用実証プロジェクト」を2025年4月2日より開始した。

今回のプロジェクトでは、日本酒の製造で生じるさまざまな副産物の中でもCO₂に着目。
日本酒を生産する工程では、お米に含まれるでんぷんを微生物が糖化・発酵することでアルコールが生産される。糖からアルコールへの変換過程で副産物として生成される「発酵由来CO₂」を独自の「循環型ものづくり」に活用する。

白鶴酒造 植物栽培

白鶴酒造とスパイスキューブの共同事業が発足した背景には、兵庫県主催の「ひょうごオープンイノベーションマッチング2024」がある。プログラムでは約半年にわたり、県内の企業5社と全国のスタートアップ企業などがオープンイノベーションを通じて新規事業開発や課題解決などに取り組めるベースの構築を目指し、マッチングや事業創出を寄り添い支援してきた。

これにより白鶴酒造株式会社とマッチングしたのが、「世界中どこでも農業を実現する」をコンセプトに掲げるスパイスキューブ株式会社だ。同社は地域密着かつ地産地消の考えに基づき、小型植物工場や室内農業に向けた農業装置サービスを開発して次世代の農業システムを提案している。

白鶴酒造 植物栽培

白鶴酒造資料館内のマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT(ハクツル サケ クラフト)」

プロジェクトは、白鶴酒造資料館内にごく小規模の醸造所として設置されたマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT(ハクツル サケ クラフト)」にて実施。ブルワリーの室内から捕集した発酵由来CO₂を濃縮し、小型の室内農業装置に送る。ここではバジルやシソ、ミントなどのハーブ類を栽培し、収穫後はHAKUTSURU SAKE CRAFTで製造する醸造酒やクラフトジンの原料として利用する計画だという。

植物は、大気中よりCO₂濃度の高い環境下で光合成能力や水利用率が向上することが知られている。つまり発酵由来CO₂を植物の生長に適した濃度で与えれば、植物の収穫量を増やしながら、製品の品質向上にもつながるかもしれない。

白鶴酒造 植物栽培

もともと日本酒造りでは廃棄物を活用する文化が育まれており、環境負荷を減らして社会課題を解決する農業イノベーションとは、サステナビリティで共通点があるといえる。今後、企業のサステナブルな協業によって生じるシナジー効果が、社会にサーキュラーエコノミーを定着させる大きな一助となっていくのではないか。

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【参照サイト】白鶴酒造 スタートアップ共創プログラム

【参照サイト】発酵由来CO₂の利活用実証プロジェクト!白鶴酒造資料館内のマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT」の発酵由来CO2で植物を栽培開始

table source 編集部
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